はじめてのディナー。
8階の部屋から、5回後方のレストランには 階段で行けばすぐである。
那美たちは 遅い時間の 食事をとってあるので 8時からのディナーに 行けばよいので とりあえず、荷物の片づけをおえた。
9日間のクルーズだが フォーマルナイトも2晩あるらしいし、夕食時には やはり、着替えたいので なんだかんだと荷物が多い。
那美などは 慎重派なゆえに 何か、汚したらとか、着れない事態が発生したらとか、あつかったら、寒かったらとどんどん、増えてしまう、いつもの 荷物である。
大したもので、インサイドのいわば、飛行機なら、エコノミーにあたるような部屋なのに、クロゼットなどの収納力は しっかりあるようだ。
ハンガーにずらりとかけてならんだ 服の中からちょっと おとなし気な 紺のジャージーの7分袖のワンピースを選んで 那美は 着替えた。
”エー、何きようかなぁ、”
何時も、支度に時間がかかるのは しゃれものの 鷹也である。
別に、すごい、ファッショナブルなものを着るわけではないが、ジャケットだの。シャツやパンツに結構こだわりがあるらしい。
でも、買うときに気に入った物から買ってしまうので あとから 組み合わせが むずかしく、那美に、アドバイザーを 頼むのがつねになる。
色も男性特有の色弱があるらしく 紺と黒の判断がつかないので 色合わせにうるさい、那美のチェックを とおしてやらなくてはならない。
そんなこんなで 鷹也も ちょっと 光沢のある紺のジャケットに シルバーグレイのコットンのパンツにきめて 何とかしたくができあがった。
と、出たところで ターンダウンに来たマリアと鉢合わせになる。
”Good eveningマリア!”と ニコニコとあいさつをしてくれる彼女に、にっこり返しながら、船内新聞の英語と日本語を1部ずついれて くれるようにたのんだ。
途中 キャビンを回っていくスタッフや 食事に行く人と ずっと、
”Good evening”と いい続ける。那美は心の中で 今までの人生の なかで いったより、多くこの移動中に行ったような気がすると 何だか感心する。
遅いディナーは ショーとの兼ね合いが難しく今日は 10時からがあるので、そちらに行くことにして とりあえず、レストランへ向かうことにした。
5階までカーペット張りの階段をおりて 行くとやはり、海外からのお客は いかにもな夜の服装に着替えている。
レストランポセイドンの入り口前は 初めてのディナーの客で 列ができていた。
タキシードとベストのスタッフが それぞれのクルーズカードに書かれているテーブルをみて 案内している。
”Good eveningマダム(まだぁむときこえる) 彼についていってください。
タキシードの上級スタッフにうながされて
レストランの中を進んでいく。たしかカードには 174とか書いてあったっけ、
どのあたりかな、窓際だとラッキだけどなどと かんがえているうちに きらびやかにセットアップされたテーブルの隙間を縫って ちょっと奥寄りの円卓に案内された。すでに日本人のカップルが二組ほどせきについて メニューを眺めている。
ざっと目を走らせた感じでは 8人テーブル。カップル4組都いう計算でゆったり座れるしつらえだ。
ここでも、とびかうGood eveningで すきっとした アジア系のうぇうたーが進み出て椅子を引いてくれる。
“nice meet you 私は 担当のサイモンです。マダム。ポセイドンへようこそ”
きれいな歯並びで にっかりわらった ウェイターの好青年。名札にはフィリピンとある。
那美はよろしくと笑みを返しつつ、先にきていた 2組のカップルに 今晩はと声をかける。鷹也も椅子に掛けながら よろしくといつもの愛想のよさだ。
直ぐに、残りの二人も現れた。こちらは一人で、来たので、 カップルではないらしい。
となりのリタイア世代らしいカップルに鷹也は さっそく、”どちらから?とか 話しかけている。
さて メニューを渡された那美は さすがの 評判通りの 高級レストラン風な 内容に 予想はしていたけれどやはり ちょっと驚いてしまう。
なんにでもちょっと 驚きを感じる自分が ちょっと かっこわるいなどと 独り言ちているのだが センシティブってことねと 自己完結を図るしかない。
薄い黄味の強めな 紙に 書かれた 、オードブル、メイン、本日のパスタ、スープなどに 眼を走らせて とりあえず エクルビスのセビーチェ、ビーフのダブルコンソメと 決め、コスレタスのサラダはドレッシングなしにしてもらい、メインは チキンのグリルを頼んだ。
鷹也は やはりセビーチェと アスパラガスのポタージュ、ニューヨークカットステーキを 頼んで ワインのリストを 頼んでいる。アシスタントウェイターのシンシンと紹介された 真面目そうな ごく若いひとと 熱心にメニューを見ていたが けっきょく、ソムリエらしきこれは ヨーロッパ系のウェイターがやってきた。
”サー、 何を召し上がります?
”ステーキなら 今日のメルローは いかがでしょう、フランスのものです。
いまきづいたが ソムリエは 英語だが、 ヘッドの サイモンはそういえば 日本語が流暢だったと那美は へええと またも思ってしまう。
シンシンは英語だったけど 今晩はといったようなきもするし、 さすがに日本回りのクルーズは 日本語の分かるスタッフがいるわけだ。
那美はもうはなから アメリカの船=英語の 頭になっていて 実は メニューのやり取りも今思えば 那美英語、サイモン日本語のおかしなことになっていたのだ。
ほかのテーブルメイトは 日本語で オーダーをしている。
というより、ゆびさしで これこれといえば はいわかりましたと サイモンが受けるので 順調に数んでいく。レストランの中も 客はほぼ入り終わり、柔らかめのライトの中を 行きかう ウェイターたちのベストが 時々光っている。
目の前には きちんと並べられた 皿と グラスに ナプキンをかけられた パンのかご。バターは 銀のバター入れに 角砂糖のように乗っている。
ソムリエが ワインを持ってきて説明をしている間に隣の一人で 来た女性が 声をかけてきた。