”はああ~やっとついたわね~
”ああ とおかったね~ おお、フロリダの陽ざしがきつい・・・
生成りの 麻のジャケットの腕を顔のまえにかかげて 鷹也が 日差しをよける
今回、二人がやってきたのは アメリカのフロリダ、フォートローダデール。
1週間のカリブ海クルーズの 出発地である。
日本からは 太平洋を越えて アメリカの東海岸にわたり、トランジットを2回、やっとの思いで 到着した。
最後のトランジットのアトランタでは 街のホテルに出ようかと思っていたが
空港近くは 何かのイベントがあったらしく 値段が 高騰した上に 部屋がなく
仕方なく 空港夜明かし体験をした二人である。
春も深まった3月末の 日本を出発なので まだ雪があったりするボストンや そこそこ涼しい アトランタ空港をへて たどり着いた フロリダは常夏の陽ざしさんさんで 空港まえに並んだタクシーは スモークの窓を光らせている。
フォートローダデールは クルーズ船の発着場所として有名なところ。
カリブ海へのクルーズ船の多くがここを起点に出発するらしく、思ったよりこじんまりした、空港の出口周辺に 船会社のブースがみえる。
係員もあちらこちらで 旗をもって誘導してお客が 並んでついて回っている。
ふたりも今回は 船のトランスファーを頼んだので 係に拾われて 時間待ちをさせられている。アライバルゲイトの外は もう すっかり、フロリダらしくエアコンが効いていないところは 懐かしいくらいの 真夏の雰囲気である。
いくつかの飛行機のお客を 集めてから 荷物をもってバスへと 移動。
大型観光バスでの移動、ハワイを思い出すような フロリダのハイウェイから
殺風景とも思える、クルーズのターミナル方面へ。
コンテナが積んであったり、燃料のもののようなコンビナートなどが並ぶ
道へおりて埃っぽい中を走っていくと 遠くに確かに クルーズ船がずらりと並んでいる。
アトランタで しっかり寝られなかった二人は うとうとしていたが その居並ぶ船に那美がきづいて歓声を上げる。
”ほらほら、 あそこ、あそこ、 あれはノーウェジアンね、ホーランドもいるし、
あのマークはプリンセス!
確かに広い岸壁だが、巨大なクルーズ船が ちまちまと縦横に詰まっている景色は
何だかかわいらしい。
”すごいね~さすがなフォートローダデールかな、鷹也もサングラスの奥から
へええと みなおしている。向こうに見えるのは めざすセレブリティ。
今までのアジアや日本とは違うクルーズといえばカリブ海というくらい メジャーなクルーズのメッカともいえる場所にとうとう やってきたと 子供みたいにワクワクの那美なのだ。
アンのおしえてもらったアメリカのサイトで いたくリーズナブルだったうえに カリフォルニアにいるおばの住所も借りられたので スムーズに 予約もうまくいった。
何でもジャパンプレミアムなので 海外で買えるのは インターネット時代のお得でもある。
クルーズにはまった那美としては あこがれの聖地でもあるカリブ。
何度もいったことのあるハワイでも いつも 飛行機から降りると独特の香りがあって
”ハワイに来たー と感じるけれど、ここでは また違う南の香りがするような気がする。
ターミナルをぬけながら 飛行機疲れが 暖かい風に吹き飛ばされていくような
かんじがして 足もかるく 船を みあげて 胸が高鳴る那美だった。