“15年、クルーズを続けてきたので いろいろなところにいったわー”
アンは 感慨深げにタブレットの写真を繰りながら 説明をしている。
朝のジムで 一緒になってから 他でも出会うことが多く 話をしているうちに写真を見せてくれるということのなってラウンジで 待ち合わせをして 聞くことになった。
経験者の話をぜひ聞きたいと思っていたので 那美は 喜んで きいていた。
” ほら、これは 南極にいったとき、アザラシが氷の上にいるでしょう。
この ワシは ケヴィンが 望遠レンズでとったのよ。
氷だけでもこんなに大きくてきれいだし”
二人は 大きめのクルーズ船で回ったので 上陸は しなかったらしい。
そういえば 鷹也は 上陸したがっていたなと 那美は 思い出した。
今は ジムへトレーニングへ行っている。今日は終日航海日なので 時間はたっぷりある。ケビンは ゴルフクラスへ いっていてきていなかった。
二人は 再婚のカップルで それぞれ子供が 独立し 二人ともクルーズに興味があって 意気投合して 一緒になって 世界を回っているとのことだ。
歯科医だったケビンは 大きな家も高級車ももたず、 ひたすらリタイア後にクルーズをするために お金をためてきて、55歳で リタイアし、二人で クルーズ三昧のなんともうらやましい話である。
那美も内心、自分だってとは おもっていても、経済のこともあるし、どうなるかは まだわからない。ましてや、始めたばかりのクルーズ、気に入りそうとはおもえていたが。
”そしてね、南アフリカでは クルーズ船からの 寄港地観光で 泊りがけで クルーガー国立公園にいってきたのよ、本当に素晴らしかった、この、サルもかわいいでしょう
動物好きのアン達の話も 写真も那美には 素敵なことばかりで ますます夢を持たせてもらえた感がある。
アフリカはね、ちょっと、エボラ騒動があって 寄港地が変わったりもしたんだけど、心配した人が多くて エージェントが 300ドル余計に払えば suiteに乗れますけどどうです?といってきたので 頼んでみたの。それは広々としていて、二人で 泊まるには淋しくなるくらい、バトラーもついていたけど頼むことがなくてこまったわ”と けらけら、楽しそうなアン。
”たまたま、初めてクルーズにのる、友人と一緒だったから 部屋に呼んで ディナーを一緒に食べたの、びっくりしてよろこんでたわ、きっとかれらもスイート目指すわよねー
寄港地の変更先は とても小さい島だけど、普段行かない、素敵なところで、
空いててゆっくりできたのよ、ナミ、クルーズ船はね、お客を危険なところにはぜったいつれていかないのよ、ぜったいに。”
そうそう、こういう話が 聞きたかったのと 那美は アンにありがとうと よろこんでみせると ”私、クルーズの初心者とお話するの、大好きなのよ、こちらこそたのしいわ、
と そのあとも ずいぶんたくさんの写真をみせてもらい、おたがい、パートナーとお昼ねと またどこかでねと 分かれてそれぞれ部屋に向かう。
”お昼ご一緒にいかが”などとならないのが 何だか、通で良い感じだ。
”それでね、たくさん写真、見せてもらったんだけど どれも、すごかったわよ、
やはり、クルーズはいいわねー
昼のビュッフェは シーデイなので、こんでいた。やっと見つけた
席で 好みのミックスに仕立てたサラダをつつきながら せっせと 鷹也に報告する。
”だろ、ね、やっぱり、クルーズはいいんだよ。”厚切りにしてもらった ローストポークにそえた アップルソースが 気に入って、ご機嫌の 鷹也である。
“ジムもさ、マシーンもそろっているし、 トレッドミルなんて 海に向かっておいてあるから、何とも、良かったよ、プールは ちょっと、冷たそうかな。
午後は どうしようか”
那美は いくつかの ダンスクラスと夕方のトリビアがねらい目だったので それを伝えると 鷹也は その辺は今回、パスと プールサイドのデッキチェアで 本を読もうかなと 言い出したので、 夕食前の着替えの時間に部屋で 会うことに決めた。
”あと、ちょっとアイスクリームとってきちゃおかな、那美はデザートはいいの?
コーヒーのおかわりと デザートをやはり、見に行くことにして 二人で 席を立つ。
”トートバッグあるから置いていけばいいよね、一緒にいくわ。
二人で くっついていなくても 安心していられる 船の自由な感じは ほんとにくつろげるとおもいながら、那美は きれいに並べられて人が集まりつつある デザートのカウンターへ向かった。
可愛い、スワンのシュークリームが呼んでいるようだ。