小説クルーズパラダイス―クルーズの魔力にとらわれて

船はよるをすべり 港へ向かう頃~

”どう?なにかきずついちゃったのかなあ?

まったくひとが センチメンタルにはまっていい気分なのに ちゃかすんだからと

那美はむっとしてみせる。

”いや、なかなかよかったねー 偶然会えたりもしたし、これって縁がふかいってやつだろ、やっぱり ぼくのおすすめは あたってるんだよ

寄港地を後ろに もうすぐ横浜へ向かう最後の夜。

明日目が覚めたら 魔法の国から帰ったアリスのように 現実に到着する。

那美の場合は魔法の国ならぬ 波の王国だけど。

”わたしね~ もう一生船を追い求めてしまいそう。

しっかり、錨おろされちゃった感がある。今まで どこにもこんなこと感じたことないのに。また行くでしょう?

鷹也がいかないなら私一人でも行っちゃいそう。

”おいおい、誰が 行かないって言ったんだい。時間が許す限りお供させていただきますよお。

鷹也はにやにや あくまで からかいモードである。

ふたりで 海外もあちこちツアーとかでいったけれど クルーズは 何か違うものを 彼らの中に植え付けてしまった。

那美は この 先行きどこにどの船でいこうか おりるまえから 考え始めている自分に驚きながらもだから フューチャークルーズデスクがあるわけだと納得したりもする。

クルーズは旅だけど いそがしく移動するというより 毎日自分が ドラマの中のヒロインになったような 気分で過ごせるものだった。

クルーズ自体が 非日常である。またそれが望めば ずっと つづけられる。

でもたとえ、一年乗り続けてもそれが 日常となることは なくて ずっと 魔法の世界にいられるのだ。

この 世界で 一番長くつづく ワンダーランドねと

デッキからみおろすと くれ行く海は 小さい声で くすくす笑いながら 今度いつ会えるのといっているように思える。

”さあ こんどは いつどこへ行こうか?

どの船にする?

”はいはい、では わたくし目にお任せを。いいの お探ししちゃいますよ。

PCなくて 残念しばしお待ちをだ。

さて そろそろ、ラストディナーかな。今夜は着替えないの?

”私は 着替えようかなあ 船にしばしのおわかれだから ご挨拶かなー

デッキのステージで バンドが 演奏を始めた。

潮風は寒そうだが ラストナイトパーティで パッキングが終わったらしい人が

集まってくる。

それぞれが きっと 魔法につかまって 踊らされてるのねーと 思いながら

階段を 降りる二人の 後ろに夜空が 広がり始めていく。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です