小説クルーズパラダイス―オフィサーズボウルでクルーズの夜は廻る

”さあ Nami おどろう

カナディアンのウィルが さそいにくる。

ここは 船のラウンジで オフィサーズボウルが はじまっている。

オフィサーズボウルというのは フォーマルナイトの行われることの多い 催しで

普段操舵室に詰めていて 会うこともあまりないような 上級オフィサーが 礼装に身を包んで あらわれ、 乗客と ダンスを踊るというものらしい。

昼食のテーブルで いっしょになった カナダ人のカップルに ”ぜひでましょう、たのしいわよ”とさそわれ ダンスなど自信のない那美は みるだけでもとやってきたものだ。

鷹也は 海外で、留学だの仕事だのの経験があり ダンスはすこぶる上手なのだ。

日本で育った那美には とんと縁のない物だったので それこそ”いやいやいや~

となってしまう。

会場は 比較的 狭いラウンジなので つめかけたひとで 一杯ではある。

礼装のスマートなオフィサーが壁際に並んでいる、女性オフィサーは 白のミリタリー風のジャケットに思い切りスリットの深い濃紺のタイトスカートに ヒールのパンプスで それもまた かっこうがいい。

はじのほうにいる ちょっと華やかな かたまりは ショーダンサーたちで、 鍛えられた体にドレスやタキシードが ピッタリで 映画のシーンの様。

お化粧だけは ちょっとドレスダウンで 中欧からの女性など目を見張るほどの美女だ。

”いいねいいね ̄キレイどころがいっぱいだなあ

鷹也は 目の保養にいそがしい。

立っている側と反対の入り口からくだんのカナダ人カップルがやってくる。

彼らは リタイアした 学校の先生で おおがらの ふっくらした感じの良い人達である。奥様の マリアは あかるくて ユーモアの利いたおばさまで 食事の席で 言葉を交わしてすぐに親しくなった。

ご主人のウィルは 背の高い太めのオジサマで これも 良い感じの人である。

アメリカの人とは ちょっとちがう 押しつけがましくない 話の しかたなどで

那美の自信のない英語にも くったくなく 話してくれる。

さすが元学校の先生だ。

”どう、もうすぐはじまるわよ ほらキャプテンがきたでしょう。

オフィサーズボウルは キャプテンと 高齢の 素敵な マダムのダンスで 始まるらしい。

アナウンスでは 乗客の中の 一番乗船時間の長い人となっていた。

相当の高齢に見えるマダムは 壮年のキャプテンにしっかり寄り添って レースのドレスをひらめかせている。

曲はっゆったりしたワルツ。足はしっかりステップを踏み くるくるフロアーをまわっている。

一曲終わり サイドにきたマダムが 杖を突いたときには 驚いた。

足が悪いか何かなのに あのかろやかさ。

侮れないレディではある。

そして次のアナウンスで 催しの中身が分かった。

各オフィサーは くじ引き状態になっていて 誰かと踊って1曲終わると あたりのオフィサーが発表される。

あたると その相手の乗客は オフィサーについていた商品、シャンパンや オンボードクレジットやレストランの食事券などが もらえることになっているらしい。

曲が流れ様子の分かっている乗客たちは 一斉に オフィサーの並んでいる壁にいって くるくると踊り始める。

”ねえねえ 大変だね^海の男は 踊れなきゃならないんだよ

”男だけじゃないわよ女性もでしょ

アジア系の数名のオフィサーが残り気味だったが カナディアンのマリアは

”わたしは 彼と踊ろうかしら

と進み出ていく、その彼は フロアーでは 他より滑らかにすべるようにおどって 大柄なマリアを 軽やかに回したり 流したり あつかっている。

とても楽しそうだ。

1曲終わるごとに 発表があり歓声が上がりまた 次へと みんな入れ代わり立ち代わり踊り続け、オフィサーは 休む間もなし。

”ほらほら 那美おいで、

”私は踊れないんです~”大丈夫 大丈夫と ウィルが フロアーに那美をつれだした。

曲は 簡単なブルースだが 那美は ダンスのステップもしらないので ウィルの足を踏まないかとひやひやである。

でも 彼は2mちかい大男なので なんだか自分が 小さくなったようで ちょっといい気分である。

そして 上から うでをとって くるくるまわされてしまう。

ああ、みんなこうやって くるくるになるんだと 心の中で おもいながら 次第に おんがくになれてくるようだ。

”ほーら 彼女大丈夫おどれるよと 額に汗して 鷹也のもとに那美をもどしながら ウィルもたのしそうだ。

”ねー 楽しいでしょう これは逃せないイベントなのよー

マリアもおどりおえて カクテルを片手に 一息ついている。

ダンスって けっこう運動量のあるものなのねと おもいつつ、 那美は ウィルにお礼をいった。

次の曲は今度はカップルで フロアーに出ていく、

”あれは やっぱり若いころ相当一緒に踊ってるね

大柄な おばさまとオジサマは いとも軽やかに フロアーをまわっている。

ふたりして 一生 ぴったりよりそってきて いま リタイアライフを楽しんでいる お手本にしたい カップルである。

日本人の社交ダンスを習っているカップルの踊る硬い感じのダンスではなく

可愛いくらいにぴったりなのだ。

フロアーの隅では つれてこられて退屈している 6歳くらいの女の子の相手を

美女ダンサーチームが している。子供は ご機嫌そうで 上手に相手をしているのがわかる。

夜は 更けてもダンスは続く。生まれて初めての舞踏会デビューの那美だった。

 

小説クルーズパラダイス―誰と行く何故行くクルーズそれぞれの旅

”year!  もいっかいね。 one two one two

オージーのシェインの 日本語ちゃんぽんの 掛け声が響く。

(もー だめかもー

那美と クレアが 腹筋トレーニングクラスで 汗をかいて 30分。

最初は アンとであった 朝のストレッチで 気軽に心地よくしていたが

そのあとの 腹筋トレーニングに 気が引かれ のこって続けてみたのだ。

20人ほどいて スタジオが結構窮屈だったのに 残ったのは 結局 那美とクレアの二人だけだった。

クレアは アメリカ人のニューヨーク美人、金髪の形の良いショートカットの長身の素敵な 人である。

なにせ 二人しかいないので 自己紹介しあい シェインに言われるがままに

体を動かした。

最後の向いあってのクランクでは 汗が ぽたぽた滴り落ちる。

クレアの顔も真っ赤である。

”OK~ ありがとございました~Thank you good job you too!!

きついけれどそう快感もある トレーニングを おえて 二人で よろよろ立ちあがる。

”部屋で シャワー浴びなきゃね、という那美に ほんとほんとと うなずいて

ふたりは ジムを後にした。

まだ 午前中の朝も早く 鷹也は おきたかどうかも わからない。

とりあえず、 バフェで コーヒーを飲んでいかなきゃと おもって かいだんをおりて いった バフェのテーブルで クレアが 手を振っている。

”NAMI! コーヒー?

”そうなのよ 汗かいたからねー

と那美が 向かいの席に 誘われるままに 腰を下ろす。

”イヤーきつかったね といいつつ、気分だけは 何だか爽やかで コーヒーがおいしく感じられる。

”Nami 一人できているの?

”ううん、主人とよ、彼は まだ 寝坊しているのよ今頃起きたかな、

朝食を食べにいかなきゃねー、クレアは?

”いいわねー うちの主人は クルーズが嫌いなのよ、

”そうなの、一人の人っておおいよね、

”そうねー

こんな美女一人で 出して しんぱいしないのかなと余計なことを考えつつ

今日何するのとかの話になって 夕方のミュージックトリビアを一緒にしようということになった。

“まかしといて 音楽は とくいなのよ!じゃあ 夕方ね Have nice day!

するりと立ち上がって いく後ろ姿に you too を おくる。

 

”かっこいいのよねー いかにもアメリカンな美人でねー 独身かとおもっちゃった

”いいね アメリカ金髪美人すきだなー トリビア見に行こうか

と ちょっと興味津々だった鷹也だが 結局夜の 時間前のナップタイムで ゆうがたの トリビアには 那美一人でいった。

この日は フォーマルナイトだったので 5時以降は着替えなくてはならないが、

4時半のトリビアは 集まっている乗客も 半々くらいのドレスアップ率だった。

ディスコラウンジの 紫いろのソファで始まりを待っている 人の間を抜けて

カウンターのそばの安楽椅子でクレアを待った。

”Hai~ Nami

白いシャツにデザイナージーンズのクレアは ニューヨークから そのまま着た感じで 嬉しそうに腰をおろした。

実際 始まってみると 他のトリビアのようにパワーポイントは使わず 要はイントロクイズで 別にチームも必要なく自分で わかって書き込んでいく形式だった。けれどやはりクレアと組んで正解。

最近ポップスなどを 聞く機会が なくなっている那美には 難題ばかりの曲である。

”マルーン5ね、曲名はえーと、と クレアは サラサラ当てていく。

那美が 協力できたのは イギリスのグループコールドプレイの Viva La Vidaくらいで もう後は エーなんだっけ きいたことがあるのに―ばかり。

一人でしたら惨敗だった、が惜しくもさすがのクレアも hip-hopのなんちゃらの

曲名が当てられず、優勝には手が届かなかった。

まったく、何でも知っている人っているもので 今回も パーフェクトのチームがあったので みんなで感心しあう。

”残念だったねー 次にまたね

着替えなくてはならない 女子2名さっさと 部屋へ向かう。

この後一緒に何とかとかなりにくいのが クルーズのいいところである。

さりげなく分かれどこかで出会ったら また こえをかけあうという、つかず離れずの知り合いい関係が うまく続く。

数千人乗っているのだから 知り合い全員と深く付き合ったら それは大変なことになるし、暗黙の了解なのかもしれない。

”これでいい?

小さいブートニアを つけた 黒いタキシード姿の鷹也は なかなか決まっている。

”うんうん きまっている。

那美は 濃紺の サージのドレスに同じ ブルー味のあるバラのコサージュを止めつける。ネックレスは しつこいので 無しにして大きめの サファイア風の垂れるピアスが 定番だろう。

銀のパンプスのストラップ横に ドレスの切り替えのプリーツが揺れる。

”ストールはいるわよね きっと寒いから

”シアターは冷えるかな もった方がいいかも。

銀の猫型の パーティバッグと 小さめの布バッグに夜空の宇宙柄のストールを詰め込む。

”ああそこの 金髪美人がクレアよ ほらあそこ

イタリアレストランの横に ドレスアップの行列ができている。

どうやら、会員のプライベートパーティがあるので 開場まちをしているらしい。

すっきりした長身によく似合う、リトルブラックドレスをまとったクレアが 脇の 若い娘と 話している。

大きな スタッドのエメラルドのピアスが 金髪に生えている。

話相手の子は高校生か 女子大生か シンプルな ピンクのふわふわした ドレスのブルネットの まじめそうな 子で クレアとなにか 話続けている。

こちらには気がつかないので 声もかけずに通り過ぎるが 鷹也は ふりかえってみてモデルなみにかっこいいねと 目の保養ができた、これだからクルーズは いいなとか何とかつぶやいている。

バフェで 話したときには 特に否定しないし ご主人がクルーズをきらいなのと さみしそうだったので すっかり 一人と思い込んでいたけれど、お嬢さん連れていたのとは驚きだった。

それもあんなに大きい子がいるとは夢には 思わなかったから。

でも 何時も体を触れ合っていないと離婚などと 夫婦が くっついているというアメリカ人に中で 子供だけ連れてクルーズにいつもだなんて 確かに淋しそうと思わず クレアの家庭環境に思いをはせてしまう。

あの列に並んでいる以上 相当数のクルーズに入っているはずだから いつも 子供だけを相手にひとりで 行くのかしら、日本では ふつうだけどなんだか アメリカでは つらそうだ。

自分たちのように 楽しみだけに来ている人もいれば そうじゃなさそうな人もいそうで クルーズは 不思議なところとますます思う那美だった。

 

 

小説クルーズパラダイス―ふたりで見た海の青

”ほら こんなに青くて 何だかよばれて吸いこまれそう_

”なみなだけに?

”つまんない、だじゃれね ロマンがないわね。

”軽いジョークですよ、海は青くて広くて生命の故郷だからね~

きっとよんでいるんだよ、いつも。

二人の立つ木製のデッキは パブリックフロアーの周りを回れるようにしつらえてある。

足にやさしそうな 木のデッキは 客船でもないところとあるところがあるらしいがこの船は 客がせっせと歩けるように一周回れるコースになっている。

時には チャリティのウォーキングイベントで みんなで 好きなだけ歩くのに参加料を寄付として集めたりもする。スタッフが リボンをはってゴールする参加者を迎えているのを 昨日見かけたばかりである。

新聞の中にチラシで挟まっていた イベントで うっかり見落として参加しそびれた二人だが 御馳走三昧の船内では ウォーキングも日課にしている。

途中、海をながめたり、 くだける泡を眺めたり、しながらおしゃべりしながら 歩けば 長さが 300mもある船だけに運動になる。

ところどころで おいてあるデッキチェアで お昼寝中の知り合いを見かけたり、

読書中の人に手を振られたり、熱心に写真を撮っている人が またトリビア仲間で カメラの映像をみろみろと 呼ばれたり、退屈しそうで なかなか退屈もできない忙しい船のなかなのだ。那美は ふと立ち止まってながめる何もないはずの水面のなかが 多くの生き物の気配で ざわざわしているようにいつも感じてしまう。

それは、大きなものから小さなものまで たくさん隠れているのだが なにも普段はみえない。

それでもその気配は おおきく うみから ゆらゆらのぼってきているようなのだ。

今まで海水浴やそれこそハワイもタヒチもモルディヴやフィジーにも行ったけど

こんな妖しい感じは 船のデッキからみて 初めて感じたものだ。

昼間は 太陽の具合や くもの具合で 色が 変わる大海原。

怖いようで 安心できるような 複雑な 気分になる。

夜は もっとすごい。夜間は移動のために船はスピードを上げるので 波も大きく砕けるし、白波も大きくたつ。

でも 星の光では 見えないので 真っ暗な海面なのだ。

長く眺めるのは 危険な感じが するくらい。

生物といえば 本州の西へ向かう清水を過ぎる頃に 夜のデッキで 海を眺めたら

白く光るものが たくさんすすっと 水面を飛ぶのが見えた。

UFOにしちゃ、ひくいし、 蛍じゃないし、光るのでイカでも飛ぶのかなと 二人で しばらく見ていたことがあった。

あとから、 スタッフに聞いたらトビウオが飛ぶのだそうだ。

イルカでも見られるかと楽しみにしていたのだが トビウオが見られたので

幸先いいと 喜んでいたが、実際、客船のデッキでイルカはほとんどみえないそうだ。

ブリッジからは 監視をしているので クジラやイルカを見ることはあるらしいが

お客の見ているところで見かけるのは まれらしい。

それでも デッキ歩きをしていると”あっ、あれ

と 声を上げてしまう那美である。

鷹也は 旅に”三角波、三角波

といなしまうのだが。

鷹也は あるきながら、船の設計もしてみたかったなーとふと いっていた。

男子は やはりそっちに興味があるようだ。

波間に白い航跡をのこして 進んでゆく 船に乗っていると 普段の家や雑事が 遠い世界になっていく。

勿論、旅だから、当たり前なのだが 何だか、帰るところがなくなったような感じ、つまり、帰らなくてもいい気分になってしまう。

これは全く中毒症状といえそうだ。

デッキの風が 全身を突き抜けていくと 海の成分が 自分にしみ込んだように那美は 感じるのだ。

船の楽しみにこんなこともあるとは 思わなかったと またしても 感心してしまう那美である。

小説クルーズパラダイス―素敵で楽しい海外パッセンジャー

“Oh good morning,

nami、きのうは楽しんだかね?

朝のバフェで ニコニコと 声をかけてきたのは いつも朝食で そばで 親しくなった トムとリリアンのカップルだ。

リリアンは台湾系アメリカ人で 今回は 台湾の実家に里帰りするのに船をえらんだとのこと。

混み合うバフェで 人を避けて 外のデッキで 食事をしに出るたびに あうので あいさつから、はじまって すっかり顔見知りとなった。

二人とも 日本が好きで 日本のテレビ番組もよく見るとのことで 特に NHKの”72時間”のファンだそうだ。

番組で みた 地方のうどんの自動販売機を探していったりして楽しんでいるらしい。

”那覇は おいしいものがたくさんあるから こまるわね~

なにか、かいものはした?

那美は 行きつけの 沖縄漆器の店の話をして 二人は次は訪ねようと 顔を合わせている。

”ところで 昨日は 誰か 亡くなったね。救急車が 港に着ていたよ。

と トム。

”全部覆われて運ばれて行ったぞ。私は デッキを歩いていて、見たんだ、 たまにあることだからな。

”そうそう、私も見たぞ”と そばのテーブルから やはりアメリカ人らしい、 男性が いってくる。

”私は、船から水葬にしてもらうことになってるからな、突然何かあっても平気なんだよ”と 得意げにトムが いうと

となりの彼も ”私もだよ

那美が ”私も そうしてほしいな~ 地面に埋められるのはいやだわ”と 賛同する。

”君は ダメだよ。私は海軍で たのんであるんだ。残念だがな~

と嬉しそうに トムがいうと もう一人も海軍らしく うんうんと二人で うれしそうだ。

海の男は とことん、海が好きらしい。かわいいくらい得意そうで ほほえましい。

”那美はまだ 知らないだろうが クルーズ中に亡くなる人など そんなにめずらしくないんだよ、年配が多いだろう。

食事中に急に倒れたり。朝起きてこなかったりな。

”クルーズ中に突然死なんて理想の死に方ね”と 那美は本心から思った。

”だろう?だから クルーズを続けるのさ~

たしかにね、アンもケヴィンも そのようだし、周りもそんな乗客は たくさんだ。

アンとは 特別に約束をしていなくても あちらこちらで 出会うから 縁が深いのかもしれない。

船長のウェルカムパーティの夜も 浴衣をきて、上手に帯をむすんだアンにであって、写真を一緒に取らせてもらった。

ほかの外国人なども 声をかけて 浴衣話で盛り上がっている。

自分は 余り、日本びいきでない それもふるさと感の薄い東京人なので 外国人の日本びいきに合うとうれしい反面、苦笑いしそうになってしまうので、 きをつけなくてはならない。

日本好きな人は 本当に気に入ってくれているのだから。

この、パールスターも 日本回りなので 日本人スタッフが多いのだが そうでないスタッフは結構日本びいきで ウェイターなども あれこれ 日本話に盛り上がる。

海外に行くと 日本を再発見するというけれど こういう感じかしらと那美は 思いながらも 嬉しそうに渋谷の話などする フィリピン人ウェイターや トルコ人バーテンダーなどの話に つきあっている。

イタリア人の バフェの ヘッドウェイターは ”ブドウの級を もっている”と言うから何かと思ったら 剣道だった。

それも真剣を使うものとか。マニアックねーと いうと けっこう、嬉しそうだった。

那美は 毎日のエンターテインメントの多さに 選ぶのが

大変なのだが、なかでも、 トリビアは 特に気に入ったものの一つだ。

最初に何をするかもわからないので 、催すエクスプローラーラウンジにいって スタッフに どうやって参加するのか 聞いたとき、チームでするから、誰かとチームを組んで といわれ、どうしようかと 思っていると アジア系の女性に”よかったらいっらしゃいよ、一緒にしましょう”と誘われるままに 仲間にいれてもらったのが、 フィリピン人のファミリーで来ていた エリザだった。

エリザそのご主人、エリザの兄カップル、そしてお母さんのオフェリア、エリザの息子で、アメリカのMIT留学している優秀な ロベルト、そのほかにも 高齢のおじさんと、いとこのローズと大人数の大家族旅行のチームである。

ニコニコと 自己紹介と家族を紹介されおわったあと クイズ番組のような トリビアをした。今までにフィリピンの人は 出稼ぎの若い女性くらいしか知らなかった那美は ひっくり返るほどの スーパー賢いファミリーだった。

勿論、MITに行っているくらいなので、ロベルトは 勿論だが、どの人も 皆、何でも知っている。また出てくる問題も、歴史も文学も科学もあるし、 英語を頭の中で 訳して、知識を 探してまた英語に戻さなければならない那美には 難易度の高ーいものである。

その状況を説明すると、今度は問題の分からない英語をわかりやすく教えてくれる。その、賢いファミリーでも僅差で まけてしまって、 またくやしがることがひとしきり。

そのあとは、いろいろなことを聞いたり聞かれたり、あっという間に おしゃべりで1時間くらい過ごしてしまった。

鷹也とバフェにランチに上がることのなっているので またねと腰を上げると

次のトリビアでねと 約束ができてしまった。

”というわけでね、夕方のトリビアにも行くのよ。いっしょにいく?

”うーん、僕は いいかな~ じゃあ、きがえて、アトリウムのラウンジで 音楽を聴いているから、 おわったら、おいでよ、 ショーにいくだろ?

鷹也は トリビアには あまり関心はない。

”午後どうする? わたしはコーラスやってみようかな。

”僕はしょってきた本片づけるよ、、午前中ジムしたし、明日は 台湾につくだろ。

ちょっと、ガイドブックもみとこうかと思って、基隆だよね。

二人の予定が するすると決まって、夕方に待ち合わせする、バーの確認をしながら ランチバフェを楽しむ。

“ああ この プレッツエルがたまらないな、食べ過ぎそう。

那美は 焼きたてのプレッツエルの誘惑から 逃れられない。

”いいんじゃないの、 やきたてなんてなかなか ないよ。

僕は、この マフィンがいいですね~

二人とも、服が心配になるほど 食事がおいしいのだ。

と、目を上げるとアイスクリーム詰まった、コーンを なめなめあるいているアンが 片手を振りながら、プールサイドにむかっていく。

やっぱり縁が深い。

”あさね、トムが言っていたんだけど、昨日誰かが なくなって船降りたんだって。

救急車が迎えに来ていたそうよ、いいような悪いようなだね。

”いいんじゃないの、僕も素敵な部屋で 気が付いたら死んでいたとかいいね~

と鷹也は 眼を回して見せる。

”そうだよね~

毎日素敵な、部屋で 遊んだでばかりいればいい船、老人ホームに入るよりずーっといいなーと 夢見てしまう。

夕方のトリビアは 結局、エリザファミリーが勝利。

景品の プリンセスのロゴ入りマグネットを 意気揚々と部屋に持ち帰れた。

トリビア前に いった コーラスは スタッフのくれた プリントの中から3曲選んで みんなで練習して世界のおまつりなる催しで 発表するとのこと。

日本人5人とアメリカ人、オーストラリア人、イギリス人の女性5人に 男性は 外国人5人くらいのグループで 何回か練習しますといわれ、曲を選んで 練習した。男性とは 話もしなかったけれど、 女子同志はすぐ話に花が咲く。

日本人の女性は やはり、英語が苦手らしく、 仲間同士で 終るといなくなってしまったけど、隣になったイギリス人のベスが 池袋が 気に入った話をはじめて

那美の最寄りの線で 行けるところなので、ローカル話になっていると、 オーストラリア人のカイリーの息子さんが 結婚して江古田にいるのよなどというものだから、もっと、 盛り上がってしまった。

もしや、どこかで あっているかもねなどといいあって 本当にグローバル化だわと 那美の 気分が上がる。

寄港しなくてもすることがたくさんだし、クルーズってほんとに楽しいと

那美は 何時も夜の着替えをしながら思うだった。

(老人ホーム代わりにクルーズ  いいわねぇ)

 

小説クルーズパラダイス―フリータイムリゾートなクルーズライフ

“15年、クルーズを続けてきたので いろいろなところにいったわー”

アンは 感慨深げにタブレットの写真を繰りながら 説明をしている。

朝のジムで 一緒になってから 他でも出会うことが多く 話をしているうちに写真を見せてくれるということのなってラウンジで 待ち合わせをして 聞くことになった。

経験者の話をぜひ聞きたいと思っていたので 那美は 喜んで きいていた。

” ほら、これは 南極にいったとき、アザラシが氷の上にいるでしょう。

この ワシは ケヴィンが 望遠レンズでとったのよ。

氷だけでもこんなに大きくてきれいだし”

二人は 大きめのクルーズ船で回ったので 上陸は しなかったらしい。

そういえば 鷹也は 上陸したがっていたなと 那美は 思い出した。

今は ジムへトレーニングへ行っている。今日は終日航海日なので 時間はたっぷりある。ケビンは ゴルフクラスへ いっていてきていなかった。

二人は 再婚のカップルで それぞれ子供が 独立し 二人ともクルーズに興味があって 意気投合して 一緒になって 世界を回っているとのことだ。

歯科医だったケビンは 大きな家も高級車ももたず、 ひたすらリタイア後にクルーズをするために お金をためてきて、55歳で リタイアし、二人で クルーズ三昧のなんともうらやましい話である。

那美も内心、自分だってとは おもっていても、経済のこともあるし、どうなるかは まだわからない。ましてや、始めたばかりのクルーズ、気に入りそうとはおもえていたが。

”そしてね、南アフリカでは クルーズ船からの 寄港地観光で 泊りがけで クルーガー国立公園にいってきたのよ、本当に素晴らしかった、この、サルもかわいいでしょう

動物好きのアン達の話も 写真も那美には 素敵なことばかりで ますます夢を持たせてもらえた感がある。

アフリカはね、ちょっと、エボラ騒動があって 寄港地が変わったりもしたんだけど、心配した人が多くて エージェントが 300ドル余計に払えば suiteに乗れますけどどうです?といってきたので 頼んでみたの。それは広々としていて、二人で 泊まるには淋しくなるくらい、バトラーもついていたけど頼むことがなくてこまったわ”と けらけら、楽しそうなアン。

”たまたま、初めてクルーズにのる、友人と一緒だったから 部屋に呼んで ディナーを一緒に食べたの、びっくりしてよろこんでたわ、きっとかれらもスイート目指すわよねー

寄港地の変更先は とても小さい島だけど、普段行かない、素敵なところで、

空いててゆっくりできたのよ、ナミ、クルーズ船はね、お客を危険なところにはぜったいつれていかないのよ、ぜったいに。”

そうそう、こういう話が 聞きたかったのと 那美は アンにありがとうと よろこんでみせると ”私、クルーズの初心者とお話するの、大好きなのよ、こちらこそたのしいわ、

と そのあとも ずいぶんたくさんの写真をみせてもらい、おたがい、パートナーとお昼ねと またどこかでねと 分かれてそれぞれ部屋に向かう。

”お昼ご一緒にいかが”などとならないのが 何だか、通で良い感じだ。

”それでね、たくさん写真、見せてもらったんだけど どれも、すごかったわよ、

やはり、クルーズはいいわねー

昼のビュッフェは シーデイなので、こんでいた。やっと見つけた

席で 好みのミックスに仕立てたサラダをつつきながら せっせと 鷹也に報告する。

”だろ、ね、やっぱり、クルーズはいいんだよ。”厚切りにしてもらった ローストポークにそえた アップルソースが 気に入って、ご機嫌の 鷹也である。

“ジムもさ、マシーンもそろっているし、 トレッドミルなんて 海に向かっておいてあるから、何とも、良かったよ、プールは ちょっと、冷たそうかな。

午後は どうしようか”

那美は いくつかの ダンスクラスと夕方のトリビアがねらい目だったので それを伝えると 鷹也は その辺は今回、パスと プールサイドのデッキチェアで 本を読もうかなと 言い出したので、 夕食前の着替えの時間に部屋で 会うことに決めた。

”あと、ちょっとアイスクリームとってきちゃおかな、那美はデザートはいいの?

コーヒーのおかわりと デザートをやはり、見に行くことにして 二人で 席を立つ。

”トートバッグあるから置いていけばいいよね、一緒にいくわ。

二人で くっついていなくても 安心していられる 船の自由な感じは ほんとにくつろげるとおもいながら、那美は きれいに並べられて人が集まりつつある デザートのカウンターへ向かった。

可愛い、スワンのシュークリームが呼んでいるようだ。

小説クルーズパラダイス―50回祝うヘビークルーザーとの出会い

”ねえねえ、じむにいってくるね

那美は、鷹也をかるくゆすってこえをかけた。

”ああ、はいはい、おっけーよ 、ご飯はまってればいいかな?

もやもやと シーツの中で 鷹也が 応じるとそうそうと 那美は さっさと

ベッドを出て 身支度を始める。

きるものは 前日の夜アクセサリーの至るまで決めておくくせがついているが、

取り合えず朝のストレッチに挑戦しようと思っているので、ジムウェアを 引き出しから取り出す。

まだ、7時。

昨夜は 午前様ぎりぎりまで、 ラウンジで 音楽など聞いてしまったから、眠くないといえばうそになるが 乗船後の探検中に ジムのスタジオで 無料のトレーニングがあると聞いて これはと 思っていたところ、船内新聞に載ていたので 早起きしたのだ。

グレーのカプリに 紺のtシャツ、ジム用にと もってきたプーマのシューズを はいて、

そうそう、クルーズカードは 忘れずに!と くびにかけ、 ハンドタオルをひとつ、 布のトートに放りこんで、 用意はOK,部屋をそっと出る。

ドアが重いので、 ばたんと閉めないように 外に出ると エレベーターにむかい、 スパ横の ジムへ上がっていった。

まだ スパもジムも空いておらず、 白人の中年の女性が 一人、ヨガマットを抱えてまっている。

おはようのあいさつをかわして にっこりして、手持ち無沙汰なので、つい

”クルーズは 何回めですか?

と、こえをかけた。

彼女は にっこりして、フフフ、実は50回目なのよと こたえた。

ブルネットのショートカットに 明るめのグレイの目が 色と同じように明るい感じの人だ。

”えー、すごいですね。わたしは、はじめてなんです

眼をきらりとさせて彼女は

”私、初めてクルーズに乗る人に会うのが 大好きなのよ。

アンといいます。おなまえうかがってもいいかしら?

と ますます、嬉しそうにいってきた。

”namiです。どちらからいらしたの?

とすると 元気な白人の青年が ソーリー、ソーリーと やってきて、ジムの戸を開けてくれた。

”みんなストレッチですか? 行きましょう行きましょう、天気もいいねー

と いたって ご機嫌な青年は昨日、ジムで説明していたトレーナーで ニュージーランド出身で、 日本にも行ったことがあるらしく、日本語がりゅうちょうなのだ。出港の翌朝で まだ 人がほとんどやってこず、アンと二人参加のストレッチだった。

始まる前にちょっと聞いたところでは アンはカナダのトロントから来ているらしい。自前のヨガマットが クルーズ慣れしている証拠のように見える。

フィットネススタジオは 船の前方で 進行方向を向いて トレッドミルができるようにしつらえてあり、いくつかのマシーンや、ウェイトリフティングスペース、その奥にちょっと仕切って 部屋があり、サイクルマシーンやボールやマットなどの器具を並べた脇に 20人くらいは参加できるようになっている。

きれいに丸められたタオルが たくさん用意されていて 自分で持ってくる必要などなさそうだった。

使ったものはかごに放り込めばよくなっている。

ストレッチも結構本格的だし、 軽快に音楽をかけて トレーナーの掛け声で 汗を流すようになっている。

無料のクラスがいくつかと、あとは有料で 専用にプログラムを作ってもらったり、細かく面倒を見てもらうこともできる。

おかれてある、パンフレットには 結構なメニューが並んでいる。

食べ過ぎも運動不足も解消できるというわけね、と那美は こんなこともサービスがあることに妙に納得してしまう。

昨夜のごちそうは 量は多めだったが 味は細やかで、 日本発着の日本人の多さを気遣っていたようで 食べ過ぎてしまいそうだったのだ。

40分ほどのストレッチで 汗だくになってまうが、 エアコンは効いているので べたつかずすっと引いていく。

アンは ”またね ケヴィンを起こして 食事に行かなきゃだから

どこかで あったら、ほかのクルーズの写真おみせするわ、

と 手を振る、那美は 初めてなので いろいろ、おしえてほしいと頼んでみたのだ。

つたない英語とは思ってみたけれど、話せば通じるもので ストレッチ1回一緒で すっかり友達気分である。

アンは 御主人のケヴィン二人で 乗船していて 二人とも 大のクルーズファンで 二人で あちこち回ったので 色々見せてくれるという。

那美も 経験者からの情報が ほしいところだったので、ちょうどく、いい方と知り合えたと 思った。

部屋に戻ると鷹也が じわじわひげをそっている。

”おかえりーどう?海は なみちゃぷちゃぷかなぁ? ここはあまりゆれないねー

相変わらず寝起きもよい人である。

”いい人にあえたのよ、カナダ人なんだけど今回50回目のクルーズだって。

いろいろおしえてくれるって。どこかで あえたらねていってた。

 

”へぇぇ そりゃ あさから 良かったね 、早起きのとくかな。

50回ってすごいな。

ごはんたべにいける?昨夜の後でもさすがに朝は おなかが すいちゃうんだよ。

”行けるいける、今これ着替えてしまうからね。

鏡前のソファに用意しておいた服に着替えながら 、朝ご飯が楽しみな那美だった。

昨夜あんなにお腹いっぱいだったのにねと 同意しながら クルーズカード大丈夫?と確認して 鷹也が 首元のカードを振り返す。

他愛ない出会いのアンと実は 何だか、縁が 深かったとは この時考えもしなかったのだ、もしかして この辺で クルーズが魔力を及ぼし始めたのかもしれない。

もしや、クルーズにえらばれてしまったとか。

小説クルーズパラダイスーお姫様ライフなクルーズ船

”何でもおいしそうで なかなか、きめるのが大変ですよね”

”そうですよねーじっくり メニューと相談してるんです”

と かえしながら、オーダーをしている那美の向こうでは”日本酒はあるかい?”

岐阜から来ているという 60代のご夫婦のご主人が ウェイターにたずねている。

”あります、大きいのどうです? いっしょびんね。やすいね、まいにちのみますか?”

どうも ボトルキープのおすすめの様だ。ワインの好きな鷹也もちょっと関心持って きいている。

色々聞いて 頼んでみることに、したらしい。隣の一人旅らしい女性が ”日本酒までのせているんですね~それも一升瓶”と 面白がりながらも感心する。

”ねー、本当に、日本発だからじゃないですか、めしあがられます?

と 返す、那美に 少しは飲みますが、わざわざ、こんなところでどうかしらと

楽しそうにくすくすしている。

”一人で来ていますから 酔ったりしてはたいへんでしょう、ねえ”

那美は日本酒は飲めないほうなので 強そうにいつも思っているので それはそうだとうんうんと うなづき、

”おひとりですか?どちらから?

”神戸です、母を誘ったのですが 船は酔うかなとことわられまして、わたしが チェックしていくことになっているんです。大きい船は よわないって ネットなんかでも書いてありますけど、じっさい行ってみないとね。

”そうですよね、そういうかたおおいですよね。私たちは 東京からです

そうこうするうちに 食事が 運ばれてくる。

どれも美しい、盛り付けが シンプルな ロゴ入りの白い大皿の上で おいしいのよと 自慢げにのっている。

“なかなですな、うわさにはきいておりましたが、やはり高級ホテルのレストラン並みの 食事を海の上で だすんですな”

日本酒のご主人は ニューヨークカットステーキが 気に入ったらしく ご機嫌である。

”ですよねー これだけの人数ですから大変ですよね、それにしても スープはしっかりしていたな、ちゃんとアスパラがはいってたきがしますね。

と 鷹也も同意することしきりである。

”ほんとうにね、おいしいものをいただけて こんなに立派な船で 何もしないで リゾートライフなんて 主婦にはゆめのようですわ。

ミセスのほうも 丁寧に調理されたスズキのグリルのソースを味わいつつ、しみじみうっとりの気分である。

那美もおなじように、船は 何とらくなのかと 思いはじめていた。

鷹也も那美も旅行好きなので あちこちずいぶん出かけているが フリーで行けばついつい 食事のことは考えてしまう。主婦にはこびりついた宿命で 朝を食べれば次の昼を、昼を食べれば 次の夜をというように 常に考えてしまう癖になっている。

ツアー旅行では ついてはいても時間がなくゆっくりできなかったり、 作り置きの料理をまとめて 食べさせられるような パターンが多い。

船では 時間に行きさえすればおいしい食事がサービスされるのである。

別にご飯目当てで乗っているわけではないけれど、人間腹のおさまりは大事であるし、

上げ膳据え膳は 昔からの主婦の夢である。

そして、 しなくてはならないのは 着る物のことを考えるくらい。

子供のころ、お姫様のように、何もしないで ドレス着て、遊んで暮らしたいなといっていたら、母にお姫様は しちゃいけないこともたくさんあるし、好き嫌いも言えないし、そんなところでごろごろできないからいいことなんかないわよと

よくいわれたものだ。

そうすると、この船の生活、きれいな服(好みによるが)着て、食事は たべさせてもらえて、遊んでいればいいというのは 究極のお姫様ライフじゃないと 那美の胸もときめきだす。

ああどうしよう、はまってしまいそうな自分が怖い 

セビーチェのドレッシングに舌鼓を打ち コンソメチェックもよし、 チキンの焼き上げと柔らかさの 具合がよくて 添えられたローズマリーが 風味よく、再度ディッシュのマッシュドポテトが禁断の糖質なのにもかかわらず、悪魔のおいしさである。

”なんでも おいしくていいなあ”と 鷹也もつぶやく。

となりのおひとり様レディは メニューがきまって 向こう側のやはり一人で来ているらしい、男性に気軽にこえをかけている。

男性のほうは ちょっと、人見知りらしく、 ええ、はあと うけている。

初日のテーブル、 社交生活になれない日本人テーブルは なんとなく、面はゆく、そう、話も弾まない。

外人のテーブルは 笑い声もたっているようである。

まだ、初めての夜、でも これからどうなるかしらと 那美の興味もいろいろ移っていく。

鷹也ほどでもないけれど、 そんなに引っ込み思案ではないから 大丈夫だろうと 飾られた生花のうえから テーブルをみわたした。

 

小説クルーズパラダイス―クルーズライフ初体験満載

はじめてのディナー。

8階の部屋から、5回後方のレストランには 階段で行けばすぐである。

那美たちは 遅い時間の 食事をとってあるので 8時からのディナーに 行けばよいので とりあえず、荷物の片づけをおえた。

9日間のクルーズだが フォーマルナイトも2晩あるらしいし、夕食時には やはり、着替えたいので なんだかんだと荷物が多い。

那美などは 慎重派なゆえに 何か、汚したらとか、着れない事態が発生したらとか、あつかったら、寒かったらとどんどん、増えてしまう、いつもの 荷物である。

大したもので、インサイドのいわば、飛行機なら、エコノミーにあたるような部屋なのに、クロゼットなどの収納力は しっかりあるようだ。

ハンガーにずらりとかけてならんだ 服の中からちょっと おとなし気な 紺のジャージーの7分袖のワンピースを選んで 那美は 着替えた。

”エー、何きようかなぁ、”

何時も、支度に時間がかかるのは しゃれものの 鷹也である。

別に、すごい、ファッショナブルなものを着るわけではないが、ジャケットだの。シャツやパンツに結構こだわりがあるらしい。

でも、買うときに気に入った物から買ってしまうので あとから 組み合わせが むずかしく、那美に、アドバイザーを 頼むのがつねになる。

色も男性特有の色弱があるらしく 紺と黒の判断がつかないので 色合わせにうるさい、那美のチェックを とおしてやらなくてはならない。

そんなこんなで 鷹也も ちょっと 光沢のある紺のジャケットに シルバーグレイのコットンのパンツにきめて 何とかしたくができあがった。

と、出たところで ターンダウンに来たマリアと鉢合わせになる。

”Good eveningマリア!”と ニコニコとあいさつをしてくれる彼女に、にっこり返しながら、船内新聞の英語と日本語を1部ずついれて くれるようにたのんだ。

途中 キャビンを回っていくスタッフや 食事に行く人と ずっと、

”Good evening”と いい続ける。那美は心の中で 今までの人生の なかで いったより、多くこの移動中に行ったような気がすると 何だか感心する。

遅いディナーは ショーとの兼ね合いが難しく今日は 10時からがあるので、そちらに行くことにして とりあえず、レストランへ向かうことにした。

5階までカーペット張りの階段をおりて 行くとやはり、海外からのお客は いかにもな夜の服装に着替えている。

レストランポセイドンの入り口前は 初めてのディナーの客で 列ができていた。

タキシードとベストのスタッフが それぞれのクルーズカードに書かれているテーブルをみて 案内している。

”Good eveningマダム(まだぁむときこえる) 彼についていってください。

タキシードの上級スタッフにうながされて

レストランの中を進んでいく。たしかカードには 174とか書いてあったっけ、

どのあたりかな、窓際だとラッキだけどなどと かんがえているうちに きらびやかにセットアップされたテーブルの隙間を縫って ちょっと奥寄りの円卓に案内された。すでに日本人のカップルが二組ほどせきについて メニューを眺めている。

ざっと目を走らせた感じでは 8人テーブル。カップル4組都いう計算でゆったり座れるしつらえだ。

ここでも、とびかうGood eveningで すきっとした アジア系のうぇうたーが進み出て椅子を引いてくれる。

“nice meet you 私は 担当のサイモンです。マダム。ポセイドンへようこそ”

きれいな歯並びで にっかりわらった ウェイターの好青年。名札にはフィリピンとある。

那美はよろしくと笑みを返しつつ、先にきていた 2組のカップルに 今晩はと声をかける。鷹也も椅子に掛けながら よろしくといつもの愛想のよさだ。

直ぐに、残りの二人も現れた。こちらは一人で、来たので、 カップルではないらしい。

となりのリタイア世代らしいカップルに鷹也は さっそく、”どちらから?とか 話しかけている。

さて メニューを渡された那美は さすがの 評判通りの 高級レストラン風な 内容に 予想はしていたけれどやはり ちょっと驚いてしまう。

なんにでもちょっと 驚きを感じる自分が ちょっと かっこわるいなどと 独り言ちているのだが センシティブってことねと 自己完結を図るしかない。

薄い黄味の強めな 紙に 書かれた 、オードブル、メイン、本日のパスタ、スープなどに 眼を走らせて とりあえず エクルビスのセビーチェ、ビーフのダブルコンソメと 決め、コスレタスのサラダはドレッシングなしにしてもらい、メインは チキンのグリルを頼んだ。

鷹也は やはりセビーチェと アスパラガスのポタージュ、ニューヨークカットステーキを 頼んで ワインのリストを 頼んでいる。アシスタントウェイターのシンシンと紹介された 真面目そうな ごく若いひとと 熱心にメニューを見ていたが けっきょく、ソムリエらしきこれは ヨーロッパ系のウェイターがやってきた。

”サー、 何を召し上がります?

”ステーキなら 今日のメルローは いかがでしょう、フランスのものです。

いまきづいたが ソムリエは 英語だが、 ヘッドの サイモンはそういえば 日本語が流暢だったと那美は へええと またも思ってしまう。

シンシンは英語だったけど 今晩はといったようなきもするし、 さすがに日本回りのクルーズは 日本語の分かるスタッフがいるわけだ。

那美はもうはなから アメリカの船=英語の 頭になっていて 実は メニューのやり取りも今思えば 那美英語、サイモン日本語のおかしなことになっていたのだ。

ほかのテーブルメイトは 日本語で オーダーをしている。

というより、ゆびさしで これこれといえば はいわかりましたと サイモンが受けるので 順調に数んでいく。レストランの中も 客はほぼ入り終わり、柔らかめのライトの中を 行きかう ウェイターたちのベストが 時々光っている。

目の前には きちんと並べられた 皿と グラスに ナプキンをかけられた パンのかご。バターは 銀のバター入れに 角砂糖のように乗っている。

ソムリエが ワインを持ってきて説明をしている間に隣の一人で 来た女性が 声をかけてきた。

小説クルーズパラダイス―横浜から南へ出港

“いやいや~ なかなか まじめな訓練だったねー こんなに本格的にするとはしらなかったよ。海軍のようだよ、さすが船旅だな。”

鷹也は あたらしい体験に興奮気味、那美も このちゃんとした避難訓練に 驚きはやはりかくせない。

”ほんとよね、 背の順にならばされたり、全員揃うのがこんなに大変とは おもわなかったわ、結構たたされてるじかんがながくて 年配の人なんか気の毒だったよね。小さい子も退屈しちゃうし 真剣なものだってもっと のる前に 触れ込んでおいてもいいかもね”

3000人もの乗客なので 一か所ではなくあちこちを マスターステーションときめて そこに集まるのだが なれて さっさと 行動する人ばかりでは なかったので 人数確認に時間が けっこう掛かった。若そうな外人や日本人のスタッフが何人もで 無線で 連絡しあっていたが なかなか始まらないし どうしていいかわからないので みんな何となく手持ち無沙汰に待っている。

しばらくして集まったグループの中で 背の順にならばされて 数を確認していた。クルーズカードは 読み取り機にかけてあるので、ずいぶん念の入った感じだが、クルーズ船はめったに事故を起こさないし、トラブルも少ないけれどもしものことは いつも考えているのかもしれない。

そう思えば 安心なので、我慢我慢とまじめな那美は あくびをおしころした。

結局、日本人のグループが 代表だけ参加すればよいとかんちがいして 集合場所に来なかったらしく、 集まっていた仲間の携帯で 連絡がついて うまくおさまった。

日本は ほとんど発着クルーズなどなくて わけのわからない乗客がおおかったから 仕方がないにしても なれた方には 申し訳ない話である。きっと

添乗員も旅行会社もよくわかっていなかったのだろうから この先よく 客に教えておいてほしいと思う。

”そろそろ 出港かな ベイブリッジくぐるの 見に行こうか”

二人は 部屋にライフジャケットをもどして またエレベーターに向かう。

だいたい部屋の位置は 船の前方に三分の二ほど言った部屋なのだが 3か所あるエレベーターの一番近いところでも けっこう距離があるのだ。

船は出港近くらしく、 エンジンの振動が つたわってきている。

エレベーターは 上に行く客で結構な混雑だったが なんとか のせてもらって

プールのある14階にあがって みんなで どっとおりて デッキサイドへ向かう。

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大きな汽笛をならして 船が 進み始める、数分で ベイブリッジをくぐるのだが プールサイドのでは バンドの演奏で スタッフと乗客が 踊っている。

これがウェルカムアボードパーティらしい。

“ほら上、うえ”

とすると デッキ中の人が 上を向く、そこには ベイブリッジがあって すれすれに 通り過ぎるので イベント状態になっているのだ。

わぁぁ~と 歓声とパラパラ拍手も沸き起こる。通りすぎて入港したから出られるのは当たり前と思ってい那美に 潮位で高さが 変わるからね けっこうリスキーだよと 鷹也が講習してくれた。なんでもよく調べる男なのである。

そっかーと うなづきつつ海原に目を移すと 暗くなりつつ海の向こうにある陸地を前景に夕日は沈んでいこうとしている。

海風もそろそろ、冷たい。

入って食事に行くしたくしなくちゃと 景色に 浸っている鷹也を促して

デッキを歩き始めた。

小説クルーズパラダイス―クルーズライフルーキー

那美も鷹也も旅行に出るのに 豪華なホテルなどにはあまりこだわらない。

国内などは 駅前のビジネスホテルをとるほどだ。

なので 結婚式のし出席とか 友人とランチなどの時以外は 都心などの高級ホテルに足を踏み入れることも ほとんど ない。

で、この 乗り込んだ世にいう豪華客船の豪華さは どうだろう。

本当に船とは思えない空間の広がりに 宇宙の星空のような 装飾の 広い吹き抜けが広がるロビー。

”へえーすごいね。うわさどおりかな”

”ほんとよね”と カーペットの引き込まれた ホールの中をエレベーターにすすんでいくと これもまた ガラス張りの鳥かごのようなかわいらしい形で すうぅと上下しているのが みえる。

カーペットの淡いベージュにあわせた 少し光沢を抑えた金色のドアのエレベーター。

乗り込むとやはり荷物を持った外人のカップルが ”ハロー”と にっこりする。

同年代くらいの 大柄の二人が 腕を組んで乗り込んでいるのが愛らしい。

こちらも”ハーイ”と かえして にっこりする、コミュニケーションの一歩目は これである。

わたしたちは8階のドルフィンデッキ。あちらも同じ階らしく8階ボタンが 光っている。

4階のフロント前から入ったので 4フロアーほどほかに止まることもなく

上がって

”ドルフィン”という 音声で空いたドアから 降りるとあちらは反対側のデッキらしく別れ際に”Have a nice day!”とこえをかけてくれた。

そこで”You too!”とかえす。コミュニケーションです。

やれやれ、ながい廊下だねと つぶやく鷹也のほうを見返せば 確かに 果てが見えないくらいの廊下が つづいている。

わたしたちの部屋は 番号から行くとずいぶん前なので、 だいぶ行くことになる。

それでも、ひっぱっているキャリーが動きにくいほどのカーペットのひかれた 廊下はここもなかなか 豪華である。

通り過ぎるドアの横に レターラックがあり部屋番号が書かれているので それを見ながら進んでいって 5分は歩いたとおもいながら、クルーズカードを差し込んで ドアを開ける。

インサイドキャビンを選んだので、窓はなくなどに当たる部分が鏡になっていて

反対側のテーブルの上の鏡とあいまって、部屋が広く見えた。

何時も、適当にとまっている、ビジネスホテルなんかよりは とてもいい部屋である。

ドア付近は狭いが 入ってすぐの壁に収納や金庫があり 反対側はシャワールームとトイレと洗面台がコンパクトに収まっている。

そのほかにウォーキングクローゼットがあって たっぷり服がかけられるようになっている。

この仕様、初めて見たときに、便利さに感動したのを那美はよくおぼえている。

なにしろ、スーツケースの中身が 空にできるのだ。

ツアー旅行で 海外もずいぶん いったふたりだけど、たいてい、旅行社の主催するツアーはとても忙しくスーツケースも出すのは必要品くらい、夜討ち朝駆けならぬ、夜ついて朝早く出発で エジプトのアガサクリスティのとまったというホテルに行ったときも 建物の姿も見ることができなかったくらい。

荷物全部だして ゆっくりしていってねといわれているような 気がしてくる。

きれいにメイクされてあるベッドの上には 今日の船内新聞 オンザボードが置かれ、小さなカードに パールスターにようこそ!とかかれたものがそえられている。

先に宅配便で送った荷物は まだ届いていないようだ。

これも船の感動の部分。海外旅行で 成田に行くのにも 最近は 宅配で空港まで おくれるが、 飛行機には 自分でのせなければならないしテロ以来の厳しい重量制限もあるし、液体の管理もうるさいし、おりてもホテルまで 引きずっていかなければならない。

横浜出発のクルーズは 家から宅配で部屋まで 届くのだ。桟橋ではなく部屋まで届くので、あとは残りを自分でもてるぶんだけにすればいいし、重さ制限もないのである。帰りだっていざとなったら部屋から段ボールで出して そのまま宅配でおくればいい。

那美は普段から 小さく荷物をまとめるのが 苦手で つい心配になってあれこれ入れてしまうので このいくつ持って行ってもいいのが いたく気に入った。

鷹也は”そんなに何、持ってるの、9日間だよ”と うるさくいつもいってくる。

鷹也自身は芸術的なほどにパッキングがうまく、荷物も少ない。なので 半分呆れた雰囲気で いつもそういってきて 那美を いらいらさせる。

実際は 那美の大荷物の中のウィンドウブレーカーを貸したりしているんだけど

結局、殿様感覚の強い鷹也に その点を突っ込んだ言い返しをすると とんでもない反応が 帰ってくることがわかっているので 、

”いいの 荷物が多いのが好きなの”と できるだけいなして 自分のいらいらは しょうがないわ袋にしまってしまうのである。

結婚生活も長くなるとこのような 袋を 持つことが できてくるものなのだ。

とするとノックがされて ”ハウスキーピング”と こえをかけてきたので 開けると 可愛いエプロン姿の女性が にこにこしている。

彼女は この部屋の担当で マリアさんといってペルーから来ているらしい。

可愛い、ワンピースの制服にしっかりアイロンの利いたエプロンをきりりとしめてなんだかやるきまんまんの お嬢さん。頼りになりそうなかんじである。

なにか、あったら言ってくださいと たどたどしい、日本語で 自己紹介と 非常訓練のお知らせをしてくれた。

ふと横を見るとドアわきに スーツケースが届いている。

”ありがとう よろしくね”と ドア横のスーツケースを取りに行く鷹也のためにドアを ささえながら いう那美に きゅめいどうきはわすれないでと 金庫の上のオレンジ色の ライフジャケットを さししめして マリアは となりの部屋の移動していった。

”ちゃんと届いてよかったねー”とさっそくベッドの上にスーツケースを広げて 鷹也が 喜んでいる。

那美派クローゼットのほうで 広げようかと思っていたが おもいなおして 船内新聞を手に取った。

”これね、4時45分に 集合場所のステーションに集まるらしいわよ、必ず全員参加なんですって、で 場所はね ドアとクルーズキーにかいてあるんだって、”

確かにカードには ステーションAとある。そしてドアにはよくホテルなどにもある非常経路のような図がかかれていた。

”トイレ小さいねーシャワールームも 狭そうだなー”ペシミストの鷹也チェックは

バスルームでシェーバーなどを 並べながら声をかけてくる。

”ま、船だからね、あるだけまし”と返す那美は 訓練の説明文を読みながらいった。

英語の実力は那美のほうが 上なので あっちこっちで 添乗員の役をするのは 那美の旅の日常なのだ。

窓がないので、時間が良くわからないのだが 時計を見ると そろそろ、2時をまわるころだ。

”ねえ荷物適当にして 上にお茶のみに いってみない?”

いこういこうと いう鷹也にクルーズカード大丈夫と念を押して 二人は 部屋を出た。

クルーズカードは 旅行会社から送られてきたホルダーにいれて 首からかけてもってあるく。

何が大事といって 船の中でも外でもとりあえず一番大事なのは クルーズカードである。

部屋から出た二人は 一瞬どっちだっけと 見まわし、こっちと 来た方へ 歩きエレベーターへむかった。後ろの方で マリアが別の部屋に声掛けをしているのが聞こえる。

なかなかいいじゃない 那美は 胸が 高鳴るのを聞いていた。