”ねえちょっとさあ 何だか変だよ
心細げにささやく鷹也の声に那美が目を覚ます。
”ええーなにぃ?
まだ 昨夜の余韻が残っていそうな クルーズの朝、船は 先日の台風の後の余波で 結構、ゆりかごな雰囲気に揺れている。
なんだか、 気分が・・という 鷹也は おやおや シーツに同化したカメレオンな 青ーい顔になっている。
”いやだ船酔いじゃない? いままで 酔ったことなかったよね?
”そう思う、人生はじめてのさいていの 気分のわるさ・・・
もうおわりなんだろか・・・
ほーら、男子はこれだからと 那美はむねのうちでこそっと笑いそうになった。
どだい、丈夫な出来の鷹也は 胃腸も呼吸器も健康で 風邪もひかないつわもの。もちろん。ジェットコースターだろうが 飛行機だろうが 酔うなどと頭の片隅にもない超人類。
でも 来たんですね,たしかに昨夜のワインは 強くて ボトルの飲み残しがもう少しで 那美が あまり そそられなかったので だいぶぐいぐい いってたのは 気が付いていたけれど。
まさか船酔いとは?
アジアを回る ロングクルーズだがまだ序盤。秋の初めで、台風が 名残を惜しんでいる季節なので海もしけがちである。
で、そんな健康な人が 普段体験しないことになるとどうなるか、こうなるのである。
しおしおと 枕にうずまって おきる気などまったく起きないと ささやくのである。
”もーでも こういうときは 何かお腹に入れたほうがいいのよ、なにか 食べられる?吐き気は?
”食べ物は 僕の人生から 消滅してもらって構わない、 もう 今日は おきられない・・
”まあまあ、そういわず、なにかあとでもってきてあげるから・・・酔い止めはなかったかな
那美はベッドで シーツとの同化を図る鷹也をしり目に さっさと着替え始める。
おっとっと ゆったりだが 大きなうねりがあるようで 足元が ぐうとゆれている。
”ゆれてるね 台風後だからしょうがないし、 もっと南にいけば おさまってくるよ、きっと、まあ シーデイだしねてたら?
朝ごはんから 何か持ってきてあげるから。
そ・・そうするぅ 同化は成功中。
着替えと軽いメイクを終えた那美は リドに朝食に上がるために腰を上げる。
”なにたべたい? どうせ冷えちゃうけど、トーストかなにか?
”いや、何もむりかなーどうせなら メモとボールペンくれれば 遺言かけるかも・・・
”そんな 馬鹿言っているようじゃ まあへいきねじゃちょっといってくるわ
シーデイの朝なのにリドが 人がすくない。
”Good MORNING MUM! あさから 元気なインド人のマラクが声をかけてくる。
”ミスターはどうしたの?あとからきます? 4人せきがいいですか?
なかよしになった リドのウェイターのマラクは さっさとアイテル席のいいところをさがしてくれる。
”今朝はね一人だから、二人席でもいいわよ。ありがとう!
朝一のコーヒーをもって 窓際の二人席にむかって マラクについていく。
もう朝日もすっかり上がり、天気がよいので 海がきらきらひかってみえるが 三角波が 立っているのでやはり多少しけているのだろう。
”ミスターはね、船酔いなのよ。
”いつも酔うんですか?お気の毒に
”いやいや、人生はじめてらしくれねー めげてるのよ、男子はね こういうのに弱いのよね
”わかります、わかります、と マラクは 半分心配の半分笑いそうに同感してくれた。
”オフィサーでも酔う人がいるんですよ。乗船して出港したらまず一番に 舳にたって 水平線に向かってヘう意向に手を挙げてじっと視線を揺れる水平線に合わせるんだそうです、それを、10分くらいしておくと後はもう酔わないとか、本人から聞いたことがありますよ。ミスターもぜひされるといいかも
”ありがとう、今は ベッドにとけこんでるから、復帰したらいっとくわ。
酔う人は どこにでもいるのねと那美は おかしくなるのが我慢できない、にやにやしながら オムレツコーナーで 2個分の目玉焼きをオーダーする。
ここでも ミスターはどした?になる。
日本人は カップルでの乗船が少なともにしないいうえ、たとえカップルでも那美たちの様に行動をともにたとえするひとが 少ないのでみんなの印象にのこるらしい。外人は カップルが当たり前だ
”今日はねー船酔いなのよ。何か、食べ物を部屋に持って行ってやろうと思うんだけど、何がいいかな?
やはり、船の上のことは 船の上が長いスタッフに聞くのが 一番と オムレツがかりに声をかけた。
”あー船酔いね、はいはい、フルーツがいいよ、リンゴなんかどう?
それとね、下の売店で 酔い止めのリストバンド売ってるから、つけさせるといいよ。 で 、PLEASE!と ささっとリンゴを1個むいて お皿に盛りつけて渡してくれた。このサービスがうれしいと那美は お礼を言って テーブルに向かう。
これを食べたら売店に行ってみなきゃ。
部屋に リンゴの皿をもって戻るとシーツ人に声をかける。
”どう? リンゴがいいんだって,スタッフがむいてくれたわよ、何か食べたほうがいいって、それと、売店で酔い止めバンドうってるらしいから みてくるね
”ありがとおお いただくかな~
くまったちゃんが むっくりおきて リンゴに手を出す。
”たべといて、たべといて
那美は皿を わたして 売店に向かった。
所謂、お土産屋 日用品なども売ってる、キオスクだが スタッフにかくかくしかじかがほしいというと さっと自分の腕をまくってみせた。
”これでしょ!私もずっとしてるのよーききますよぉ
隅の携帯の充電器などが 固まってかけてあるラックに 2つ入りパッケージで 酔い止めバンドが あった。
子供用のヘアポニーにつかうような ポリエステルの生地でできた わっかにぽっちり 白いプラスティックの出っ張りがついている。
レジに持って行っていくとこのぽっちをツボに当てて、酔い止めを止めるとか。
説明も全部英語の海外仕様である。
日本人は知らない中国3000年の知恵で 皆、救われているのが グローバルで 面白いなあと感心し、カードをわたした。
”これできくって やってごらん。
鷹也のごつい手首に つけたお子様ポニー状の 酔い止めは ひどく心元ない感じがしたものの きけば すごいよねと 言われた通りに 手のひらの付け根から指2本を当てて寸法を測ってやりながら、本人じゃなくてツボは 合うんだろうかと ちょっと?におもいながら位置を たしかめる。
“窮屈じゃない? ここでいいらしいよ。しばらく様子見て。もっと何か食べる?
”いいですう 紅茶だけ入れてくれるといいなぁ
ほんと男子は こういう時は おとなしいし、なさけない。
”ありがとおお 那美さま、那美どの なおったら、おきるからあ 感謝感謝ですぅ
”じゃあね ごゆっくり 私は トリビアでもしてくるから昼前にはもどってくるからね。
まいあさ、エクスプローラーラウンジでする トリビアも人が少ない。
エンターテインメントチームの ニッキ―も今日は すくないねー
みんなよったかなーと ふふっと 笑って では 船酔いなどにならない強いわれわれで 楽しみまーす!と元気がいい。
那美も楽しいくらいで まったく揺れには強い。
見渡すといつもの顔ぶれも 男子が少ないような。
全世界 男子は 酔いやすいのかも、これはアダムの遺伝子のなせる業?
きっと みんな 男性が酔いやすいから 中国のツボ研究も進んだのかも。
古代バイキングとか ギリシア人とか 大昔どうだったんだろう、船酔いのバイキングを思い浮かべて 笑いがこみあげる那美だった。
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