小説クルーズパラダイスーカリブの風は何色?

”はああ~やっとついたわね~

”ああ とおかったね~ おお、フロリダの陽ざしがきつい・・・

生成りの 麻のジャケットの腕を顔のまえにかかげて 鷹也が 日差しをよける

今回、二人がやってきたのは アメリカのフロリダ、フォートローダデール。

1週間のカリブ海クルーズの 出発地である。

日本からは 太平洋を越えて アメリカの東海岸にわたり、トランジットを2回、やっとの思いで 到着した。

最後のトランジットのアトランタでは 街のホテルに出ようかと思っていたが

空港近くは 何かのイベントがあったらしく 値段が 高騰した上に 部屋がなく

仕方なく 空港夜明かし体験をした二人である。

春も深まった3月末の 日本を出発なので まだ雪があったりするボストンや そこそこ涼しい アトランタ空港をへて たどり着いた フロリダは常夏の陽ざしさんさんで 空港まえに並んだタクシーは スモークの窓を光らせている。

フォートローダデールは クルーズ船の発着場所として有名なところ。

カリブ海へのクルーズ船の多くがここを起点に出発するらしく、思ったよりこじんまりした、空港の出口周辺に 船会社のブースがみえる。

係員もあちらこちらで 旗をもって誘導してお客が 並んでついて回っている。

ふたりも今回は 船のトランスファーを頼んだので 係に拾われて 時間待ちをさせられている。アライバルゲイトの外は もう すっかり、フロリダらしくエアコンが効いていないところは 懐かしいくらいの 真夏の雰囲気である。

いくつかの飛行機のお客を 集めてから 荷物をもってバスへと 移動。

大型観光バスでの移動、ハワイを思い出すような フロリダのハイウェイから

殺風景とも思える、クルーズのターミナル方面へ。

コンテナが積んであったり、燃料のもののようなコンビナートなどが並ぶ

道へおりて埃っぽい中を走っていくと 遠くに確かに クルーズ船がずらりと並んでいる。

アトランタで しっかり寝られなかった二人は うとうとしていたが その居並ぶ船に那美がきづいて歓声を上げる。

”ほらほら、 あそこ、あそこ、 あれはノーウェジアンね、ホーランドもいるし、

あのマークはプリンセス!

確かに広い岸壁だが、巨大なクルーズ船が ちまちまと縦横に詰まっている景色は

何だかかわいらしい。

”すごいね~さすがなフォートローダデールかな、鷹也もサングラスの奥から

へええと みなおしている。向こうに見えるのは めざすセレブリティ。

今までのアジアや日本とは違うクルーズといえばカリブ海というくらい メジャーなクルーズのメッカともいえる場所にとうとう やってきたと 子供みたいにワクワクの那美なのだ。

アンのおしえてもらったアメリカのサイトで いたくリーズナブルだったうえに カリフォルニアにいるおばの住所も借りられたので スムーズに 予約もうまくいった。

何でもジャパンプレミアムなので 海外で買えるのは インターネット時代のお得でもある。

クルーズにはまった那美としては あこがれの聖地でもあるカリブ。

何度もいったことのあるハワイでも いつも 飛行機から降りると独特の香りがあって

”ハワイに来たー と感じるけれど、ここでは また違う南の香りがするような気がする。

ターミナルをぬけながら 飛行機疲れが 暖かい風に吹き飛ばされていくような

かんじがして 足もかるく 船を みあげて 胸が高鳴る那美だった。

 

 

 

小説クルーズパラダイス―クルーズの魔力にとらわれて

船はよるをすべり 港へ向かう頃~

”どう?なにかきずついちゃったのかなあ?

まったくひとが センチメンタルにはまっていい気分なのに ちゃかすんだからと

那美はむっとしてみせる。

”いや、なかなかよかったねー 偶然会えたりもしたし、これって縁がふかいってやつだろ、やっぱり ぼくのおすすめは あたってるんだよ

寄港地を後ろに もうすぐ横浜へ向かう最後の夜。

明日目が覚めたら 魔法の国から帰ったアリスのように 現実に到着する。

那美の場合は魔法の国ならぬ 波の王国だけど。

”わたしね~ もう一生船を追い求めてしまいそう。

しっかり、錨おろされちゃった感がある。今まで どこにもこんなこと感じたことないのに。また行くでしょう?

鷹也がいかないなら私一人でも行っちゃいそう。

”おいおい、誰が 行かないって言ったんだい。時間が許す限りお供させていただきますよお。

鷹也はにやにや あくまで からかいモードである。

ふたりで 海外もあちこちツアーとかでいったけれど クルーズは 何か違うものを 彼らの中に植え付けてしまった。

那美は この 先行きどこにどの船でいこうか おりるまえから 考え始めている自分に驚きながらもだから フューチャークルーズデスクがあるわけだと納得したりもする。

クルーズは旅だけど いそがしく移動するというより 毎日自分が ドラマの中のヒロインになったような 気分で過ごせるものだった。

クルーズ自体が 非日常である。またそれが望めば ずっと つづけられる。

でもたとえ、一年乗り続けてもそれが 日常となることは なくて ずっと 魔法の世界にいられるのだ。

この 世界で 一番長くつづく ワンダーランドねと

デッキからみおろすと くれ行く海は 小さい声で くすくす笑いながら 今度いつ会えるのといっているように思える。

”さあ こんどは いつどこへ行こうか?

どの船にする?

”はいはい、では わたくし目にお任せを。いいの お探ししちゃいますよ。

PCなくて 残念しばしお待ちをだ。

さて そろそろ、ラストディナーかな。今夜は着替えないの?

”私は 着替えようかなあ 船にしばしのおわかれだから ご挨拶かなー

デッキのステージで バンドが 演奏を始めた。

潮風は寒そうだが ラストナイトパーティで パッキングが終わったらしい人が

集まってくる。

それぞれが きっと 魔法につかまって 踊らされてるのねーと 思いながら

階段を 降りる二人の 後ろに夜空が 広がり始めていく。

小説クルーズパラダイス―船旅で 人生模様は波柄に

“基隆も なかなかいいところでしたわね”と

テーブルメイトのマダムは すこぶるごきげんである。

“台北にはきたことがありましたけれど、こんな港町でも 結構、楽しいのですのね。お土産もかえましたし、 市場も面白かったし、船ならではですね”と

自分から、今日の寄港地の話がでてくる。

那美たちは 昼間は 船の中であちこちいっているし、その行先がちがうのか、

毎日のディナーのテーブルメイトの日本人とはめったにであわないのだ。

不思議と、仲良くなった外国人とはしょっちゅう会うのだが。

それで 顔を合わせるのは ディナータイムなのだが、 一人で来ていた男性は いつの間にか、姿を現さなくなったので バフェや有料レストランへ行っているのかもしれない。

一人旅の女性は カップルの中で、ひとりになってしまったせいか、 余り話し好きではないようだし、 日本酒好きのご主人の奥様と那美たち二人が 話をするくらいになっている。

その奥様も さすがに ご主人が ぐいぐい行くので ちょっとけん制気分で 時には 余りご機嫌のよくないこともあるようになっていた。

クルーズも後半になり、あと少しのシーデイで 横浜へ向かっている。

でもその中で 最後の台湾の寄港地の基隆が 奥様の気分を変えてくれたので 那美はほっとした気分になった。

鷹也は明るくてお喋り上手だが さすがに一人漫才となるようなことは避けるので

あまり盛り上がらないテーブルだった。

ウェイターもいい人だがおふざけをするようなこともなく 上品に淡々とサービスをしてくれていた。

夜は催しが忙しくて 那美もショーなどに急ぎたいので 余り話しが盛り上がってもそれはそれで 忙しいし、まあ程よくてよかったのだ。

でも 今晩は ちょっと寄港地の話で、にぎわった。

この船では テーブルも時間も決まっているので 同じ顔ぶれで クルーズ中デイナーを食べることになっているがどうも あちこちで 聞いた話では 船によっては 時間が決まっていなかったり、 レストランもあちこちいけたり、二人席で ずっとということもあるし、千差万別になっているらしい。

二人席ならともかく、 人数のある席では 一応礼儀として 食事と会話も楽しまなくてはならないのだ。

カっプルで座ったからといって、二人だけで話のは失礼なので、周りとも、話題を共有しなくてはならない。

政治と宗教の話はひかえたほうがいいなどと書かれたものを呼んだこともあったし

休暇を楽しんでいることになるわけだから、あまり仕事の話も 避けたいところである。でも、なぜか、やはり、仕事をきいたり、 家族事情などに話が向いてしまうこともあって、うまく話を変えたいと那美はいつも苦労する。

鷹也は 仕事の話はリゾートですることを嫌うのだ。

別に隠れているわけでもないけれど、自分の気持ちがくつろげないからということらしい。それでも、 このテーブルでは 結構聞き出されていた。

本人たちも自分の事情を話したくて しかたがないらしく、そういうことは 結構きかされた。

みんな、それぞれ それなりに問題があったりするらしく、ついペシミスティックな 話になっていきがちで ”あ また”と 思うと 那美は ”すみません 00が始まるので ~”と席を外させてもらうほうに持っていく。

鷹也は自分は聞かれたくないが結構よその人の話は  うンうん聞いてしまうほうなので、あっそうだねとか慌てて、ナプキンをテーブルにおくようだ。

命の洗濯といえそうな クルーズなのに、家のことを引きずってみんな大変だわと 那美は思うが 鷹也に言わせるとみんな、こぼすのを楽しみにしているんだよとのこと。

旅の恥はかき捨てというけれど 皆、自分の中のもやもやもこの広ーい海の上の船から捨ててしまいたいのかもしれないなーと那美はおもう。

那美自体は それはいろんなことはあっても ここに来るともういいやとおもえているし、この先も次のクルーズのことばかり考えそうだと クルーズ中毒の兆候は あらたかである。

クルーズライフ自体がドラマの中の様なのに さらに 色んな人のドラマが 聞こえてくる 不思議な空間である。

海風にふきよせられて 人間模様まで集まってくるのかもしれない。

那美の模様は 波の形に 書き換えられはじめている。

クルーズに のると人生に

海が組み込まれてしまうのだ。

小説クルーズパラダイスートリビアで燃えろ、グローバルな戦い?

“Noo,Nami これはね パリノアメリカ人よ

生粋のニューヨークっ子の ケイトが自信ありげに 答えを書き込む。

那美も パリのアメリカ人なのは 承知の上だが、 問題は 曲名でかかっていたのは ラプソディインブルーで 那美も好きな曲だから 自信はあったが 、アメリカ女性の自信の前には それを説明する時間もなく 次の問題へと進む。

結局、那美があっていて、 オージーのジェフが 那美がなんだか、言ってたよねこれ、自信もってよ~という羽目になった。

面白いことにアメリカのレディは ほとんどが 間違えても”アラ おかしいわね”と

自信は ゆるがないのだ。

日本人は つい、外人に ”本当に? Are you sure?”といわれると よく知っていることでも ”えーとぉ

となってしまうのだ。

那美は日本人的でないと自負していた 自分が 日本人だったことに 改めて驚いてしまう。鷹也はまた 留学が 長かったので ちょっとかわっているし、 トリビアには ほとんど顔を出さないので どうなのかさだかではない。

でも 参加して、いろんな国の人と 一緒にするたびにお国柄を 見て取れるのが 結構面白くて 那美の隠れた楽しみなのである。

もちろん一概に言えることではないが おおむねの雰囲気というものがある。

日本人の中でも関東と関西、こまかくいえば 県違いでも結構違いがあるから

それの世界バージョンになるのだ。

スコットランドの 若い新婚さんは まだ20代後半だというのに 本当に物知りで

那美と3人だけのチームだったのにほとんど正解で、驚いた。

那美などは 問題を 理解することから始め、答えを日本語で 引っ張り出して それを翻訳しなければならないので もう大変。

後は スペルがわからないので ローマ字風にかいたり、 果ては 絵をかいて

”この象の絵 うまいねーと妙なお褒めをいただいたり。

英語の訓練とトリビアのゲームと 脳トレには最高、日本でもやってほしいと おもったりしている。

船の中では以外とトリビアファンが多く、

マニアに至っては強いチームで 結託して勝ち続けたり、アマチュアは引っ込んでろなどとの 発言をされて憤慨するカナダのレディもいたし、なかなか、静かだけど燃える催しになっているのだ。

一般のものと 音楽系があるが、 一般の出題は スタッフに任されていて それは多岐なところから出されてくる。

何で、そんなこと知っているのと思うほど なんでもしっていそうだが、 ネットのトリビアゲームでもかぶっている問題があったり、知る人ぞ知るものがあったり、那美は そのジャンルの広さも楽しい。

0000年のツールドフランスの優勝者はだれ?とか、 スポーツ系でもマニアックだったり、 このセリフで始まるシェイクスピアの作品を選べだの、動物系は 強いと思っている那美でも 心配になるような問題も出るとおもえば、ごく 簡単なものもあったり、簡単でも世界はメジャーでないものを那美がしっていて ”おおお Namiがいてよかった!!となったり、まあ悲喜こもごもではある。

でもお互いに頭を寄せ合って 解いていくとなんだか 親しくなるのがかんたんなのだ。

那美の最初のトリビアのときに、さそってくれた フィリピンのオフェリアのファミリーは 本当に賢くて親切、問題も悩んでいるとさっと 簡単に言い換えてくれ、そして 強く、何回も景品をもらえて大喜びしていた。

景品といってもちょっとした、船のブランドのロゴなどがついた小物だが 何となく、みんな、かちたいようではある。

那美などは 勝ちたいけど所詮ゲームだし、英語力もいまいちだしと思っているが

まにあなチームは 出題のスタッフにクレームを入れたりもする、しつこいやりとりをしていると そんなことに、うるさいぞと 正義感のおじさんなどが 大きな声で 横やりを入れ、その奥様にそんなことにくちをはさむなんてと たしなめられて、”でも だってあれだろう・・・とか 大きなオージーのオジサマが 小さくなってかわいらしいことになる。

都会風の年配カップルとしたときは 答えがあっているたびに 答えを考えたご主人に奥様が “ぐーっどぼおいぃ”と 微笑みかけるのが 何ともステキだったと

その日のディナーの話題になった。

それでも参加する、日本人が本当に少ないのが さみしいといつも思う。

日本人と組みたいわけではない、実際多国籍で組んだ方が

やはり正解率が高い、ジャンル別にいろいろ、知っているわけになるからだろう。でも、日本人だっていろいろ知っているのに、英語力がなくて 参加してこないのだろうか。

日本人だけのトリビアを催すときもあるが、それもまた 外国人は参加できないし、せっかく 世界中の人が乗っているのに、もったいないとおもえるのだ。

実際、イスラエルの人と一緒になって 後におしゃべりして お国の話を聞けた。

日本にいたらできないことである。アイスランドとドイツ人のカップルにあったり、アメリカ人だって 住んでいる場所で感じが みんな違うし、オーストラリアやヨーロッパでも そうである。

世界中がいろいろな多様性を感じられるのが クルーズとわかってきた那美だが、

トリビアではさらにその多様性のもっとおくが みえてくると おもっている。

人生の勉強の場になる クルーズねと 鷹也にいった。

 

小説クルーズパラダイス―オフィサーズボウルでクルーズの夜は廻る

”さあ Nami おどろう

カナディアンのウィルが さそいにくる。

ここは 船のラウンジで オフィサーズボウルが はじまっている。

オフィサーズボウルというのは フォーマルナイトの行われることの多い 催しで

普段操舵室に詰めていて 会うこともあまりないような 上級オフィサーが 礼装に身を包んで あらわれ、 乗客と ダンスを踊るというものらしい。

昼食のテーブルで いっしょになった カナダ人のカップルに ”ぜひでましょう、たのしいわよ”とさそわれ ダンスなど自信のない那美は みるだけでもとやってきたものだ。

鷹也は 海外で、留学だの仕事だのの経験があり ダンスはすこぶる上手なのだ。

日本で育った那美には とんと縁のない物だったので それこそ”いやいやいや~

となってしまう。

会場は 比較的 狭いラウンジなので つめかけたひとで 一杯ではある。

礼装のスマートなオフィサーが壁際に並んでいる、女性オフィサーは 白のミリタリー風のジャケットに思い切りスリットの深い濃紺のタイトスカートに ヒールのパンプスで それもまた かっこうがいい。

はじのほうにいる ちょっと華やかな かたまりは ショーダンサーたちで、 鍛えられた体にドレスやタキシードが ピッタリで 映画のシーンの様。

お化粧だけは ちょっとドレスダウンで 中欧からの女性など目を見張るほどの美女だ。

”いいねいいね ̄キレイどころがいっぱいだなあ

鷹也は 目の保養にいそがしい。

立っている側と反対の入り口からくだんのカナダ人カップルがやってくる。

彼らは リタイアした 学校の先生で おおがらの ふっくらした感じの良い人達である。奥様の マリアは あかるくて ユーモアの利いたおばさまで 食事の席で 言葉を交わしてすぐに親しくなった。

ご主人のウィルは 背の高い太めのオジサマで これも 良い感じの人である。

アメリカの人とは ちょっとちがう 押しつけがましくない 話の しかたなどで

那美の自信のない英語にも くったくなく 話してくれる。

さすが元学校の先生だ。

”どう、もうすぐはじまるわよ ほらキャプテンがきたでしょう。

オフィサーズボウルは キャプテンと 高齢の 素敵な マダムのダンスで 始まるらしい。

アナウンスでは 乗客の中の 一番乗船時間の長い人となっていた。

相当の高齢に見えるマダムは 壮年のキャプテンにしっかり寄り添って レースのドレスをひらめかせている。

曲はっゆったりしたワルツ。足はしっかりステップを踏み くるくるフロアーをまわっている。

一曲終わり サイドにきたマダムが 杖を突いたときには 驚いた。

足が悪いか何かなのに あのかろやかさ。

侮れないレディではある。

そして次のアナウンスで 催しの中身が分かった。

各オフィサーは くじ引き状態になっていて 誰かと踊って1曲終わると あたりのオフィサーが発表される。

あたると その相手の乗客は オフィサーについていた商品、シャンパンや オンボードクレジットやレストランの食事券などが もらえることになっているらしい。

曲が流れ様子の分かっている乗客たちは 一斉に オフィサーの並んでいる壁にいって くるくると踊り始める。

”ねえねえ 大変だね^海の男は 踊れなきゃならないんだよ

”男だけじゃないわよ女性もでしょ

アジア系の数名のオフィサーが残り気味だったが カナディアンのマリアは

”わたしは 彼と踊ろうかしら

と進み出ていく、その彼は フロアーでは 他より滑らかにすべるようにおどって 大柄なマリアを 軽やかに回したり 流したり あつかっている。

とても楽しそうだ。

1曲終わるごとに 発表があり歓声が上がりまた 次へと みんな入れ代わり立ち代わり踊り続け、オフィサーは 休む間もなし。

”ほらほら 那美おいで、

”私は踊れないんです~”大丈夫 大丈夫と ウィルが フロアーに那美をつれだした。

曲は 簡単なブルースだが 那美は ダンスのステップもしらないので ウィルの足を踏まないかとひやひやである。

でも 彼は2mちかい大男なので なんだか自分が 小さくなったようで ちょっといい気分である。

そして 上から うでをとって くるくるまわされてしまう。

ああ、みんなこうやって くるくるになるんだと 心の中で おもいながら 次第に おんがくになれてくるようだ。

”ほーら 彼女大丈夫おどれるよと 額に汗して 鷹也のもとに那美をもどしながら ウィルもたのしそうだ。

”ねー 楽しいでしょう これは逃せないイベントなのよー

マリアもおどりおえて カクテルを片手に 一息ついている。

ダンスって けっこう運動量のあるものなのねと おもいつつ、 那美は ウィルにお礼をいった。

次の曲は今度はカップルで フロアーに出ていく、

”あれは やっぱり若いころ相当一緒に踊ってるね

大柄な おばさまとオジサマは いとも軽やかに フロアーをまわっている。

ふたりして 一生 ぴったりよりそってきて いま リタイアライフを楽しんでいる お手本にしたい カップルである。

日本人の社交ダンスを習っているカップルの踊る硬い感じのダンスではなく

可愛いくらいにぴったりなのだ。

フロアーの隅では つれてこられて退屈している 6歳くらいの女の子の相手を

美女ダンサーチームが している。子供は ご機嫌そうで 上手に相手をしているのがわかる。

夜は 更けてもダンスは続く。生まれて初めての舞踏会デビューの那美だった。

 

小説クルーズパラダイス―誰と行く何故行くクルーズそれぞれの旅

”year!  もいっかいね。 one two one two

オージーのシェインの 日本語ちゃんぽんの 掛け声が響く。

(もー だめかもー

那美と クレアが 腹筋トレーニングクラスで 汗をかいて 30分。

最初は アンとであった 朝のストレッチで 気軽に心地よくしていたが

そのあとの 腹筋トレーニングに 気が引かれ のこって続けてみたのだ。

20人ほどいて スタジオが結構窮屈だったのに 残ったのは 結局 那美とクレアの二人だけだった。

クレアは アメリカ人のニューヨーク美人、金髪の形の良いショートカットの長身の素敵な 人である。

なにせ 二人しかいないので 自己紹介しあい シェインに言われるがままに

体を動かした。

最後の向いあってのクランクでは 汗が ぽたぽた滴り落ちる。

クレアの顔も真っ赤である。

”OK~ ありがとございました~Thank you good job you too!!

きついけれどそう快感もある トレーニングを おえて 二人で よろよろ立ちあがる。

”部屋で シャワー浴びなきゃね、という那美に ほんとほんとと うなずいて

ふたりは ジムを後にした。

まだ 午前中の朝も早く 鷹也は おきたかどうかも わからない。

とりあえず、 バフェで コーヒーを飲んでいかなきゃと おもって かいだんをおりて いった バフェのテーブルで クレアが 手を振っている。

”NAMI! コーヒー?

”そうなのよ 汗かいたからねー

と那美が 向かいの席に 誘われるままに 腰を下ろす。

”イヤーきつかったね といいつつ、気分だけは 何だか爽やかで コーヒーがおいしく感じられる。

”Nami 一人できているの?

”ううん、主人とよ、彼は まだ 寝坊しているのよ今頃起きたかな、

朝食を食べにいかなきゃねー、クレアは?

”いいわねー うちの主人は クルーズが嫌いなのよ、

”そうなの、一人の人っておおいよね、

”そうねー

こんな美女一人で 出して しんぱいしないのかなと余計なことを考えつつ

今日何するのとかの話になって 夕方のミュージックトリビアを一緒にしようということになった。

“まかしといて 音楽は とくいなのよ!じゃあ 夕方ね Have nice day!

するりと立ち上がって いく後ろ姿に you too を おくる。

 

”かっこいいのよねー いかにもアメリカンな美人でねー 独身かとおもっちゃった

”いいね アメリカ金髪美人すきだなー トリビア見に行こうか

と ちょっと興味津々だった鷹也だが 結局夜の 時間前のナップタイムで ゆうがたの トリビアには 那美一人でいった。

この日は フォーマルナイトだったので 5時以降は着替えなくてはならないが、

4時半のトリビアは 集まっている乗客も 半々くらいのドレスアップ率だった。

ディスコラウンジの 紫いろのソファで始まりを待っている 人の間を抜けて

カウンターのそばの安楽椅子でクレアを待った。

”Hai~ Nami

白いシャツにデザイナージーンズのクレアは ニューヨークから そのまま着た感じで 嬉しそうに腰をおろした。

実際 始まってみると 他のトリビアのようにパワーポイントは使わず 要はイントロクイズで 別にチームも必要なく自分で わかって書き込んでいく形式だった。けれどやはりクレアと組んで正解。

最近ポップスなどを 聞く機会が なくなっている那美には 難題ばかりの曲である。

”マルーン5ね、曲名はえーと、と クレアは サラサラ当てていく。

那美が 協力できたのは イギリスのグループコールドプレイの Viva La Vidaくらいで もう後は エーなんだっけ きいたことがあるのに―ばかり。

一人でしたら惨敗だった、が惜しくもさすがのクレアも hip-hopのなんちゃらの

曲名が当てられず、優勝には手が届かなかった。

まったく、何でも知っている人っているもので 今回も パーフェクトのチームがあったので みんなで感心しあう。

”残念だったねー 次にまたね

着替えなくてはならない 女子2名さっさと 部屋へ向かう。

この後一緒に何とかとかなりにくいのが クルーズのいいところである。

さりげなく分かれどこかで出会ったら また こえをかけあうという、つかず離れずの知り合いい関係が うまく続く。

数千人乗っているのだから 知り合い全員と深く付き合ったら それは大変なことになるし、暗黙の了解なのかもしれない。

”これでいい?

小さいブートニアを つけた 黒いタキシード姿の鷹也は なかなか決まっている。

”うんうん きまっている。

那美は 濃紺の サージのドレスに同じ ブルー味のあるバラのコサージュを止めつける。ネックレスは しつこいので 無しにして大きめの サファイア風の垂れるピアスが 定番だろう。

銀のパンプスのストラップ横に ドレスの切り替えのプリーツが揺れる。

”ストールはいるわよね きっと寒いから

”シアターは冷えるかな もった方がいいかも。

銀の猫型の パーティバッグと 小さめの布バッグに夜空の宇宙柄のストールを詰め込む。

”ああそこの 金髪美人がクレアよ ほらあそこ

イタリアレストランの横に ドレスアップの行列ができている。

どうやら、会員のプライベートパーティがあるので 開場まちをしているらしい。

すっきりした長身によく似合う、リトルブラックドレスをまとったクレアが 脇の 若い娘と 話している。

大きな スタッドのエメラルドのピアスが 金髪に生えている。

話相手の子は高校生か 女子大生か シンプルな ピンクのふわふわした ドレスのブルネットの まじめそうな 子で クレアとなにか 話続けている。

こちらには気がつかないので 声もかけずに通り過ぎるが 鷹也は ふりかえってみてモデルなみにかっこいいねと 目の保養ができた、これだからクルーズは いいなとか何とかつぶやいている。

バフェで 話したときには 特に否定しないし ご主人がクルーズをきらいなのと さみしそうだったので すっかり 一人と思い込んでいたけれど、お嬢さん連れていたのとは驚きだった。

それもあんなに大きい子がいるとは夢には 思わなかったから。

でも 何時も体を触れ合っていないと離婚などと 夫婦が くっついているというアメリカ人に中で 子供だけ連れてクルーズにいつもだなんて 確かに淋しそうと思わず クレアの家庭環境に思いをはせてしまう。

あの列に並んでいる以上 相当数のクルーズに入っているはずだから いつも 子供だけを相手にひとりで 行くのかしら、日本では ふつうだけどなんだか アメリカでは つらそうだ。

自分たちのように 楽しみだけに来ている人もいれば そうじゃなさそうな人もいそうで クルーズは 不思議なところとますます思う那美だった。

 

 

小説クルーズパラダイス―ふたりで見た海の青

”ほら こんなに青くて 何だかよばれて吸いこまれそう_

”なみなだけに?

”つまんない、だじゃれね ロマンがないわね。

”軽いジョークですよ、海は青くて広くて生命の故郷だからね~

きっとよんでいるんだよ、いつも。

二人の立つ木製のデッキは パブリックフロアーの周りを回れるようにしつらえてある。

足にやさしそうな 木のデッキは 客船でもないところとあるところがあるらしいがこの船は 客がせっせと歩けるように一周回れるコースになっている。

時には チャリティのウォーキングイベントで みんなで 好きなだけ歩くのに参加料を寄付として集めたりもする。スタッフが リボンをはってゴールする参加者を迎えているのを 昨日見かけたばかりである。

新聞の中にチラシで挟まっていた イベントで うっかり見落として参加しそびれた二人だが 御馳走三昧の船内では ウォーキングも日課にしている。

途中、海をながめたり、 くだける泡を眺めたり、しながらおしゃべりしながら 歩けば 長さが 300mもある船だけに運動になる。

ところどころで おいてあるデッキチェアで お昼寝中の知り合いを見かけたり、

読書中の人に手を振られたり、熱心に写真を撮っている人が またトリビア仲間で カメラの映像をみろみろと 呼ばれたり、退屈しそうで なかなか退屈もできない忙しい船のなかなのだ。那美は ふと立ち止まってながめる何もないはずの水面のなかが 多くの生き物の気配で ざわざわしているようにいつも感じてしまう。

それは、大きなものから小さなものまで たくさん隠れているのだが なにも普段はみえない。

それでもその気配は おおきく うみから ゆらゆらのぼってきているようなのだ。

今まで海水浴やそれこそハワイもタヒチもモルディヴやフィジーにも行ったけど

こんな妖しい感じは 船のデッキからみて 初めて感じたものだ。

昼間は 太陽の具合や くもの具合で 色が 変わる大海原。

怖いようで 安心できるような 複雑な 気分になる。

夜は もっとすごい。夜間は移動のために船はスピードを上げるので 波も大きく砕けるし、白波も大きくたつ。

でも 星の光では 見えないので 真っ暗な海面なのだ。

長く眺めるのは 危険な感じが するくらい。

生物といえば 本州の西へ向かう清水を過ぎる頃に 夜のデッキで 海を眺めたら

白く光るものが たくさんすすっと 水面を飛ぶのが見えた。

UFOにしちゃ、ひくいし、 蛍じゃないし、光るのでイカでも飛ぶのかなと 二人で しばらく見ていたことがあった。

あとから、 スタッフに聞いたらトビウオが飛ぶのだそうだ。

イルカでも見られるかと楽しみにしていたのだが トビウオが見られたので

幸先いいと 喜んでいたが、実際、客船のデッキでイルカはほとんどみえないそうだ。

ブリッジからは 監視をしているので クジラやイルカを見ることはあるらしいが

お客の見ているところで見かけるのは まれらしい。

それでも デッキ歩きをしていると”あっ、あれ

と 声を上げてしまう那美である。

鷹也は 旅に”三角波、三角波

といなしまうのだが。

鷹也は あるきながら、船の設計もしてみたかったなーとふと いっていた。

男子は やはりそっちに興味があるようだ。

波間に白い航跡をのこして 進んでゆく 船に乗っていると 普段の家や雑事が 遠い世界になっていく。

勿論、旅だから、当たり前なのだが 何だか、帰るところがなくなったような感じ、つまり、帰らなくてもいい気分になってしまう。

これは全く中毒症状といえそうだ。

デッキの風が 全身を突き抜けていくと 海の成分が 自分にしみ込んだように那美は 感じるのだ。

船の楽しみにこんなこともあるとは 思わなかったと またしても 感心してしまう那美である。

小説クルーズパラダイス―素敵で楽しい海外パッセンジャー

“Oh good morning,

nami、きのうは楽しんだかね?

朝のバフェで ニコニコと 声をかけてきたのは いつも朝食で そばで 親しくなった トムとリリアンのカップルだ。

リリアンは台湾系アメリカ人で 今回は 台湾の実家に里帰りするのに船をえらんだとのこと。

混み合うバフェで 人を避けて 外のデッキで 食事をしに出るたびに あうので あいさつから、はじまって すっかり顔見知りとなった。

二人とも 日本が好きで 日本のテレビ番組もよく見るとのことで 特に NHKの”72時間”のファンだそうだ。

番組で みた 地方のうどんの自動販売機を探していったりして楽しんでいるらしい。

”那覇は おいしいものがたくさんあるから こまるわね~

なにか、かいものはした?

那美は 行きつけの 沖縄漆器の店の話をして 二人は次は訪ねようと 顔を合わせている。

”ところで 昨日は 誰か 亡くなったね。救急車が 港に着ていたよ。

と トム。

”全部覆われて運ばれて行ったぞ。私は デッキを歩いていて、見たんだ、 たまにあることだからな。

”そうそう、私も見たぞ”と そばのテーブルから やはりアメリカ人らしい、 男性が いってくる。

”私は、船から水葬にしてもらうことになってるからな、突然何かあっても平気なんだよ”と 得意げにトムが いうと

となりの彼も ”私もだよ

那美が ”私も そうしてほしいな~ 地面に埋められるのはいやだわ”と 賛同する。

”君は ダメだよ。私は海軍で たのんであるんだ。残念だがな~

と嬉しそうに トムがいうと もう一人も海軍らしく うんうんと二人で うれしそうだ。

海の男は とことん、海が好きらしい。かわいいくらい得意そうで ほほえましい。

”那美はまだ 知らないだろうが クルーズ中に亡くなる人など そんなにめずらしくないんだよ、年配が多いだろう。

食事中に急に倒れたり。朝起きてこなかったりな。

”クルーズ中に突然死なんて理想の死に方ね”と 那美は本心から思った。

”だろう?だから クルーズを続けるのさ~

たしかにね、アンもケヴィンも そのようだし、周りもそんな乗客は たくさんだ。

アンとは 特別に約束をしていなくても あちらこちらで 出会うから 縁が深いのかもしれない。

船長のウェルカムパーティの夜も 浴衣をきて、上手に帯をむすんだアンにであって、写真を一緒に取らせてもらった。

ほかの外国人なども 声をかけて 浴衣話で盛り上がっている。

自分は 余り、日本びいきでない それもふるさと感の薄い東京人なので 外国人の日本びいきに合うとうれしい反面、苦笑いしそうになってしまうので、 きをつけなくてはならない。

日本好きな人は 本当に気に入ってくれているのだから。

この、パールスターも 日本回りなので 日本人スタッフが多いのだが そうでないスタッフは結構日本びいきで ウェイターなども あれこれ 日本話に盛り上がる。

海外に行くと 日本を再発見するというけれど こういう感じかしらと那美は 思いながらも 嬉しそうに渋谷の話などする フィリピン人ウェイターや トルコ人バーテンダーなどの話に つきあっている。

イタリア人の バフェの ヘッドウェイターは ”ブドウの級を もっている”と言うから何かと思ったら 剣道だった。

それも真剣を使うものとか。マニアックねーと いうと けっこう、嬉しそうだった。

那美は 毎日のエンターテインメントの多さに 選ぶのが

大変なのだが、なかでも、 トリビアは 特に気に入ったものの一つだ。

最初に何をするかもわからないので 、催すエクスプローラーラウンジにいって スタッフに どうやって参加するのか 聞いたとき、チームでするから、誰かとチームを組んで といわれ、どうしようかと 思っていると アジア系の女性に”よかったらいっらしゃいよ、一緒にしましょう”と誘われるままに 仲間にいれてもらったのが、 フィリピン人のファミリーで来ていた エリザだった。

エリザそのご主人、エリザの兄カップル、そしてお母さんのオフェリア、エリザの息子で、アメリカのMIT留学している優秀な ロベルト、そのほかにも 高齢のおじさんと、いとこのローズと大人数の大家族旅行のチームである。

ニコニコと 自己紹介と家族を紹介されおわったあと クイズ番組のような トリビアをした。今までにフィリピンの人は 出稼ぎの若い女性くらいしか知らなかった那美は ひっくり返るほどの スーパー賢いファミリーだった。

勿論、MITに行っているくらいなので、ロベルトは 勿論だが、どの人も 皆、何でも知っている。また出てくる問題も、歴史も文学も科学もあるし、 英語を頭の中で 訳して、知識を 探してまた英語に戻さなければならない那美には 難易度の高ーいものである。

その状況を説明すると、今度は問題の分からない英語をわかりやすく教えてくれる。その、賢いファミリーでも僅差で まけてしまって、 またくやしがることがひとしきり。

そのあとは、いろいろなことを聞いたり聞かれたり、あっという間に おしゃべりで1時間くらい過ごしてしまった。

鷹也とバフェにランチに上がることのなっているので またねと腰を上げると

次のトリビアでねと 約束ができてしまった。

”というわけでね、夕方のトリビアにも行くのよ。いっしょにいく?

”うーん、僕は いいかな~ じゃあ、きがえて、アトリウムのラウンジで 音楽を聴いているから、 おわったら、おいでよ、 ショーにいくだろ?

鷹也は トリビアには あまり関心はない。

”午後どうする? わたしはコーラスやってみようかな。

”僕はしょってきた本片づけるよ、、午前中ジムしたし、明日は 台湾につくだろ。

ちょっと、ガイドブックもみとこうかと思って、基隆だよね。

二人の予定が するすると決まって、夕方に待ち合わせする、バーの確認をしながら ランチバフェを楽しむ。

“ああ この プレッツエルがたまらないな、食べ過ぎそう。

那美は 焼きたてのプレッツエルの誘惑から 逃れられない。

”いいんじゃないの、 やきたてなんてなかなか ないよ。

僕は、この マフィンがいいですね~

二人とも、服が心配になるほど 食事がおいしいのだ。

と、目を上げるとアイスクリーム詰まった、コーンを なめなめあるいているアンが 片手を振りながら、プールサイドにむかっていく。

やっぱり縁が深い。

”あさね、トムが言っていたんだけど、昨日誰かが なくなって船降りたんだって。

救急車が迎えに来ていたそうよ、いいような悪いようなだね。

”いいんじゃないの、僕も素敵な部屋で 気が付いたら死んでいたとかいいね~

と鷹也は 眼を回して見せる。

”そうだよね~

毎日素敵な、部屋で 遊んだでばかりいればいい船、老人ホームに入るよりずーっといいなーと 夢見てしまう。

夕方のトリビアは 結局、エリザファミリーが勝利。

景品の プリンセスのロゴ入りマグネットを 意気揚々と部屋に持ち帰れた。

トリビア前に いった コーラスは スタッフのくれた プリントの中から3曲選んで みんなで練習して世界のおまつりなる催しで 発表するとのこと。

日本人5人とアメリカ人、オーストラリア人、イギリス人の女性5人に 男性は 外国人5人くらいのグループで 何回か練習しますといわれ、曲を選んで 練習した。男性とは 話もしなかったけれど、 女子同志はすぐ話に花が咲く。

日本人の女性は やはり、英語が苦手らしく、 仲間同士で 終るといなくなってしまったけど、隣になったイギリス人のベスが 池袋が 気に入った話をはじめて

那美の最寄りの線で 行けるところなので、ローカル話になっていると、 オーストラリア人のカイリーの息子さんが 結婚して江古田にいるのよなどというものだから、もっと、 盛り上がってしまった。

もしや、どこかで あっているかもねなどといいあって 本当にグローバル化だわと 那美の 気分が上がる。

寄港しなくてもすることがたくさんだし、クルーズってほんとに楽しいと

那美は 何時も夜の着替えをしながら思うだった。

(老人ホーム代わりにクルーズ  いいわねぇ)

 

小説クルーズパラダイス―フリータイムリゾートなクルーズライフ

“15年、クルーズを続けてきたので いろいろなところにいったわー”

アンは 感慨深げにタブレットの写真を繰りながら 説明をしている。

朝のジムで 一緒になってから 他でも出会うことが多く 話をしているうちに写真を見せてくれるということのなってラウンジで 待ち合わせをして 聞くことになった。

経験者の話をぜひ聞きたいと思っていたので 那美は 喜んで きいていた。

” ほら、これは 南極にいったとき、アザラシが氷の上にいるでしょう。

この ワシは ケヴィンが 望遠レンズでとったのよ。

氷だけでもこんなに大きくてきれいだし”

二人は 大きめのクルーズ船で回ったので 上陸は しなかったらしい。

そういえば 鷹也は 上陸したがっていたなと 那美は 思い出した。

今は ジムへトレーニングへ行っている。今日は終日航海日なので 時間はたっぷりある。ケビンは ゴルフクラスへ いっていてきていなかった。

二人は 再婚のカップルで それぞれ子供が 独立し 二人ともクルーズに興味があって 意気投合して 一緒になって 世界を回っているとのことだ。

歯科医だったケビンは 大きな家も高級車ももたず、 ひたすらリタイア後にクルーズをするために お金をためてきて、55歳で リタイアし、二人で クルーズ三昧のなんともうらやましい話である。

那美も内心、自分だってとは おもっていても、経済のこともあるし、どうなるかは まだわからない。ましてや、始めたばかりのクルーズ、気に入りそうとはおもえていたが。

”そしてね、南アフリカでは クルーズ船からの 寄港地観光で 泊りがけで クルーガー国立公園にいってきたのよ、本当に素晴らしかった、この、サルもかわいいでしょう

動物好きのアン達の話も 写真も那美には 素敵なことばかりで ますます夢を持たせてもらえた感がある。

アフリカはね、ちょっと、エボラ騒動があって 寄港地が変わったりもしたんだけど、心配した人が多くて エージェントが 300ドル余計に払えば suiteに乗れますけどどうです?といってきたので 頼んでみたの。それは広々としていて、二人で 泊まるには淋しくなるくらい、バトラーもついていたけど頼むことがなくてこまったわ”と けらけら、楽しそうなアン。

”たまたま、初めてクルーズにのる、友人と一緒だったから 部屋に呼んで ディナーを一緒に食べたの、びっくりしてよろこんでたわ、きっとかれらもスイート目指すわよねー

寄港地の変更先は とても小さい島だけど、普段行かない、素敵なところで、

空いててゆっくりできたのよ、ナミ、クルーズ船はね、お客を危険なところにはぜったいつれていかないのよ、ぜったいに。”

そうそう、こういう話が 聞きたかったのと 那美は アンにありがとうと よろこんでみせると ”私、クルーズの初心者とお話するの、大好きなのよ、こちらこそたのしいわ、

と そのあとも ずいぶんたくさんの写真をみせてもらい、おたがい、パートナーとお昼ねと またどこかでねと 分かれてそれぞれ部屋に向かう。

”お昼ご一緒にいかが”などとならないのが 何だか、通で良い感じだ。

”それでね、たくさん写真、見せてもらったんだけど どれも、すごかったわよ、

やはり、クルーズはいいわねー

昼のビュッフェは シーデイなので、こんでいた。やっと見つけた

席で 好みのミックスに仕立てたサラダをつつきながら せっせと 鷹也に報告する。

”だろ、ね、やっぱり、クルーズはいいんだよ。”厚切りにしてもらった ローストポークにそえた アップルソースが 気に入って、ご機嫌の 鷹也である。

“ジムもさ、マシーンもそろっているし、 トレッドミルなんて 海に向かっておいてあるから、何とも、良かったよ、プールは ちょっと、冷たそうかな。

午後は どうしようか”

那美は いくつかの ダンスクラスと夕方のトリビアがねらい目だったので それを伝えると 鷹也は その辺は今回、パスと プールサイドのデッキチェアで 本を読もうかなと 言い出したので、 夕食前の着替えの時間に部屋で 会うことに決めた。

”あと、ちょっとアイスクリームとってきちゃおかな、那美はデザートはいいの?

コーヒーのおかわりと デザートをやはり、見に行くことにして 二人で 席を立つ。

”トートバッグあるから置いていけばいいよね、一緒にいくわ。

二人で くっついていなくても 安心していられる 船の自由な感じは ほんとにくつろげるとおもいながら、那美は きれいに並べられて人が集まりつつある デザートのカウンターへ向かった。

可愛い、スワンのシュークリームが呼んでいるようだ。

小説クルーズパラダイス―50回祝うヘビークルーザーとの出会い

”ねえねえ、じむにいってくるね

那美は、鷹也をかるくゆすってこえをかけた。

”ああ、はいはい、おっけーよ 、ご飯はまってればいいかな?

もやもやと シーツの中で 鷹也が 応じるとそうそうと 那美は さっさと

ベッドを出て 身支度を始める。

きるものは 前日の夜アクセサリーの至るまで決めておくくせがついているが、

取り合えず朝のストレッチに挑戦しようと思っているので、ジムウェアを 引き出しから取り出す。

まだ、7時。

昨夜は 午前様ぎりぎりまで、 ラウンジで 音楽など聞いてしまったから、眠くないといえばうそになるが 乗船後の探検中に ジムのスタジオで 無料のトレーニングがあると聞いて これはと 思っていたところ、船内新聞に載ていたので 早起きしたのだ。

グレーのカプリに 紺のtシャツ、ジム用にと もってきたプーマのシューズを はいて、

そうそう、クルーズカードは 忘れずに!と くびにかけ、 ハンドタオルをひとつ、 布のトートに放りこんで、 用意はOK,部屋をそっと出る。

ドアが重いので、 ばたんと閉めないように 外に出ると エレベーターにむかい、 スパ横の ジムへ上がっていった。

まだ スパもジムも空いておらず、 白人の中年の女性が 一人、ヨガマットを抱えてまっている。

おはようのあいさつをかわして にっこりして、手持ち無沙汰なので、つい

”クルーズは 何回めですか?

と、こえをかけた。

彼女は にっこりして、フフフ、実は50回目なのよと こたえた。

ブルネットのショートカットに 明るめのグレイの目が 色と同じように明るい感じの人だ。

”えー、すごいですね。わたしは、はじめてなんです

眼をきらりとさせて彼女は

”私、初めてクルーズに乗る人に会うのが 大好きなのよ。

アンといいます。おなまえうかがってもいいかしら?

と ますます、嬉しそうにいってきた。

”namiです。どちらからいらしたの?

とすると 元気な白人の青年が ソーリー、ソーリーと やってきて、ジムの戸を開けてくれた。

”みんなストレッチですか? 行きましょう行きましょう、天気もいいねー

と いたって ご機嫌な青年は昨日、ジムで説明していたトレーナーで ニュージーランド出身で、 日本にも行ったことがあるらしく、日本語がりゅうちょうなのだ。出港の翌朝で まだ 人がほとんどやってこず、アンと二人参加のストレッチだった。

始まる前にちょっと聞いたところでは アンはカナダのトロントから来ているらしい。自前のヨガマットが クルーズ慣れしている証拠のように見える。

フィットネススタジオは 船の前方で 進行方向を向いて トレッドミルができるようにしつらえてあり、いくつかのマシーンや、ウェイトリフティングスペース、その奥にちょっと仕切って 部屋があり、サイクルマシーンやボールやマットなどの器具を並べた脇に 20人くらいは参加できるようになっている。

きれいに丸められたタオルが たくさん用意されていて 自分で持ってくる必要などなさそうだった。

使ったものはかごに放り込めばよくなっている。

ストレッチも結構本格的だし、 軽快に音楽をかけて トレーナーの掛け声で 汗を流すようになっている。

無料のクラスがいくつかと、あとは有料で 専用にプログラムを作ってもらったり、細かく面倒を見てもらうこともできる。

おかれてある、パンフレットには 結構なメニューが並んでいる。

食べ過ぎも運動不足も解消できるというわけね、と那美は こんなこともサービスがあることに妙に納得してしまう。

昨夜のごちそうは 量は多めだったが 味は細やかで、 日本発着の日本人の多さを気遣っていたようで 食べ過ぎてしまいそうだったのだ。

40分ほどのストレッチで 汗だくになってまうが、 エアコンは効いているので べたつかずすっと引いていく。

アンは ”またね ケヴィンを起こして 食事に行かなきゃだから

どこかで あったら、ほかのクルーズの写真おみせするわ、

と 手を振る、那美は 初めてなので いろいろ、おしえてほしいと頼んでみたのだ。

つたない英語とは思ってみたけれど、話せば通じるもので ストレッチ1回一緒で すっかり友達気分である。

アンは 御主人のケヴィン二人で 乗船していて 二人とも 大のクルーズファンで 二人で あちこち回ったので 色々見せてくれるという。

那美も 経験者からの情報が ほしいところだったので、ちょうどく、いい方と知り合えたと 思った。

部屋に戻ると鷹也が じわじわひげをそっている。

”おかえりーどう?海は なみちゃぷちゃぷかなぁ? ここはあまりゆれないねー

相変わらず寝起きもよい人である。

”いい人にあえたのよ、カナダ人なんだけど今回50回目のクルーズだって。

いろいろおしえてくれるって。どこかで あえたらねていってた。

 

”へぇぇ そりゃ あさから 良かったね 、早起きのとくかな。

50回ってすごいな。

ごはんたべにいける?昨夜の後でもさすがに朝は おなかが すいちゃうんだよ。

”行けるいける、今これ着替えてしまうからね。

鏡前のソファに用意しておいた服に着替えながら 、朝ご飯が楽しみな那美だった。

昨夜あんなにお腹いっぱいだったのにねと 同意しながら クルーズカード大丈夫?と確認して 鷹也が 首元のカードを振り返す。

他愛ない出会いのアンと実は 何だか、縁が 深かったとは この時考えもしなかったのだ、もしかして この辺で クルーズが魔力を及ぼし始めたのかもしれない。

もしや、クルーズにえらばれてしまったとか。