小説クルーズパラダイス―大自然の偉大さにひれ伏した男子の巻

この 轟音は なにに例えればいいのだろう。

船の前方から響き渡る 雷が10個も落ちたというか、自爆テロ?と ブラックにふざけるか、デッキ歩きの最中の那美たち二人は 驚いて足をとめた。

”もしや、これは 崩落音?もう着いたの?

”行かなきゃ行かなきゃだよ。

そろそろ、つく頃というキャプテンのアナウンスは聞いてはいたが この 轟音のお迎えとは。

季節もまだ浅いので なかなか、崩落は 時間がかかると 思っていたのに、早くもである。

船首にかけつけると 何時もは しまっている 船の真ん前のデッキがひらいて 多くの乗客が 詰めかけている。

ほらほら こっちこっちと スタッフが 手招きしてくれる方へ 駆けつけ デッキに出ると小雨交じりの悪天のなか、みんな携帯やタブレットを掲げて 船首で 待っているのだ。

那美たちも何とか隙間を見つけて 船べりに張り付く。

船のエンジンが とめられているのか、ひそひそと 話す声がしても 皆、結構静かに待っている。

目の前には 巨大な氷の壁が 遠くまで続いていて これが氷河の断面である。

その氷河が氷河なゆえん、川なのでゆるゆると前に流れてきていて ある拍子に 轟音を立てて崩れ落ちる。

今回のクルーズのメインイベントではある。

那美も映像も写真も見たことはあったけれど、この大きさと この崩落音に度肝を抜かれたっといいたくなる気分になった。

鷹也など、あごが 落ちかけている。

まるで はじめて 動物園の象を見た子供のような 顔である。

音もなくふっている こまかいみぞれ交じりの雨に これだけの人が シーンと して 崩落を待っている、そして 崩れると おおおと小さい歓声が上がり、拍手も聞こえてくる。

大自然のショーという 軽々しい言い方で表すには すこし偉大過ぎるようだと 那美は思った。

また少し、小さく崩れるとみんなが ほうっとため息をつく。

だいぶ冷えているので、中には 撤退していく客もいるし、あとから来たひとに 前をゆずったり、 すこしずつ 変わりあいながら みんなで この イベントを楽しんでいた。

この大きな船が 氷河の流れに押されてすこしずつ動いているのを 感じる。

”ねえ、船推されてるよね、

”やっぱり、感じる?ぼくもそう思って居たとこなんだ、 すごいちからだよねぇ

鷹也のあごは しまったり閉じたりしているが どうやら 話は できるようだ。

深くおろした ジャケットのフードも 役に立たずに、顔に吹き付ける小雨が つめたくて顔がこおりそうになっている那美は

(アイス美容があったような)など、つまらないことがうかんできてしまった。

確かに、温度はひくく、海がシャーベット状になっている。

海水は塩分をふくんでいるので なかなかの低い温度ということだ。

6回ほどの崩落をみて 那美が音をあげた。

”そろそろ、一度はいらない?グリーンピースのスープとかって 飲んでみたいじゃない?

”あ、そお? いいよ、いこか?”

見とれていた お子様状態の鷹也が あわてて うなずいて見せた。

どうやら、この世にもどってこられたようだ。

ふたりは 頑張る乗客を後に室内に撤退する、手も顔も、きんきんにひえきっている。

中には 緑のスープが入ったカップが並んだ トレイを持ったスタッフが 待ち受けていて にこにこ、配ってくれる。

とろみのついた グリーンピースのスープで 温まるのが伝統だそうだ。

ちょっと、冷めてはいるが カップを持つ手も心地よい。

”あのさ、話があるんだけど”と 鷹也が いきなり、真剣な顔で 切り出して

スープおいしいわ~と ほんわかしていた那美は ”エー何?

と 何だか、成り行きについて行けていない。

”なんだか、人間て小さいなって、それで なんだか、自分も小さい奴だったんじゃないかっておもえて・・・

だから、那美に小さい奴で かけてた 迷惑とかいっぱいあるんじゃないかって

おもえて ・・・

だから、だから

全部 もうしわけないっ! ここで ゆるしてやってくれっていいたかったんだよ”

”なに、なに、 どしたの?

許すも何もないでしょう。

もちろん、お受けしますけど。”

ごちゃごちゃ質問してもしょうがなさそうなシチュエーションに

鷹也の突然の告白ともいえない、お詫び宣言。

へへー 氷河様は 男子にバウリニューアルさせる力が あったのねー

なんだか、大宣言をした 元少年一名、鼻息荒くもスープに苦戦中である。

”ねえ、これ熱いねえ 猫舌なんだよなーあちあち・・

大自然が偉大って こういうこともあると スープをすすりながら、 那美は遠い崩落音に耳をすました。

頑張った主婦の海外旅行記―ハワイ離島昔話

さてさて ハワイは ハワイ諸島が本当の名前で つまり、いくつか島があるのです。

有名なワイキキがオアフ島、ビッグアイランドで一番大きいのは マウイ島、

シダの洞窟で 有名な カウアイ島(かのピアース・ブロスナンが住んでるらしい)、噴火が大変だった ハワイ島、にほんじんが昔入植した歴史もあります。

他にラナイ島、これは ゴルフ場が ほとんどの小さい島。

他にも観光地とされていない、モロカイ島や無人島もいくつかあると、おもいました。

でもずいぶん通ったハワイですが、実は離島体験は ほとんどないのです。

新婚旅行の時にカウアイ島には 観光オプショナルツアーで行きました。

飛行機で 飛びバスで回ります。40年前は まだシダの洞窟は 入ることができたのですが、ちょうど、 その時結婚式をしていて私たちは入れませんでした。

洞窟といっても岩のくぼみ程度ですが うえから、熱帯性のシダが きれいに垂れていて 雰囲気が素晴らしい。

ボートで ついた花嫁が 洞窟までのぼっていくシーンは映画の様でした。

今は 環境保護のために 入れず、手前のところで 結婚式を挙げるようです。

昔、そちらで あげられた方 ラッキーでしたね。

針のような岩をみたりして 回りましたが 昔のことですし、初めてでしたので ガイドさんにくっついていくのに 一生懸命で実は よく覚えていないのです。

ですが、このとき、見事な アフロヘアの巨人のような ポリネシアのかんこうきゃくの青年と 写真を一緒に取りました。

トンガから来た人でしたが 向こうも日本人が珍しく、珍しい同志で 写真に納まったわけです。そのころは まだ 大相撲にも外人力士などいないので そこだけは印象に残っています。小錦ほどはありませんでしたけれどかなり大きい人でした。止まらずに観光で 回った覚えがあります。

ワイキキなどよりもずっと、 ハワイの元の雰囲気のある熱帯らしい島でした。今はどうでしょうか。

マウイ島も観光ツアーで回りました。こちらは ワイキキのホテルにつて そこのパンフレットから 予約した現地のツアー。

子供も連れて行ったように記憶しているので20年くらい前でしょうか。

そのころ、日本のエージェントで 頼むと、土産物屋とか連れていかれるし、観光時間は短いしと、 いまいちな感じでしたので できるだけ飛行機とホテル、送迎セットだけで、どこかに行きたいときは 現地ツアーを頼んでいました。

慣れているし、日本のツアーがいかないところにも行きます。

ハワイ島と違って マウイ島は 火山活動が 終っているので 火口をみたり、高いところに上がって 星空をみたりします。

ハワイは常夏ですが 二つある山の上はどちらも寒く、火口がみられる ハレアカラは雪が降ることもあるとか、昼間でも 風が強いので とても寒く、展望台から見下ろすのも、室内に出たり入ったりしていました。

ここの火口は 鉄分が多く参加して、真っ赤ないわがごろごろとあり、火星の景色の様といわれています。確かに、別の世界のようで、SFチックな 景色ではあります。

ここにしかない、不思議な銀剣草という珍しい 植物もみられますし、 やはり固有種のNANAという カモの仲間の鳥もみられます。

ラハイナが繁華街で 季節によっては そのあたりの海にクジラがやってくるので、昔は 捕鯨の街だったそうです。なので クジラの骨を使って、鯨漁師が手慰みに堀ったスクリム・ショウというものが アクセサリーなどになっていました。私もひとつ、かいました。

さとうきび列車というかわいい観光汽車にも乗りましたね。

運転士が 昔ながらの石炭で 動く機関車を走らせていて、黒い煙がもくもくと 後ろの客車にも流れてきました。

今では 定期的には 走ってないそうで これも残念ですね。

そして 活火山で有名な ハワイ島、こちらも大きな島で ここに行ったのは や針、17.8年前でしょうか。ここには、 下の子供と主人の母とで 4人で行きました。

珍しく豪華にヒルトンワイコロアビレッジに泊まりました。

これがまた 結構東側のリゾートで 街からはなれていましたので 、コナとヒロの街の印象が薄いです。でも ここでは ブルーヘリコプターのツアーにのって、観光し、ジュラシックパーのロケにつかった滝や崖などや 火山の溶岩なども上から近くに見えました。一番すごかったのは 海に流れ込むところ。

溶岩が流れてはいるので 海が 蒸発して水蒸気はもうもうと上がっているのです。

すこしずつ島が大きくなってるよとパイロットさんが ニコニコいっていました。

ワイコロアビレッジはいくつものホテルが集まった、大きな場所で中の移動に 電車を使ったり、ボートで 運河を移動したりもうそれだけで 遊園地の様でした。

もちろん歩いて移動もできますし、そのあるく道筋には、タイあたりのものと思しき古代仏跡の仏像の彫刻などが並んでいて、そこはそこで また美術館のようです。

そばに町はなかったですがシャトルで行ける小さいモールのような場所はあってそこにワイランドのショップがあって 可愛いアザラシの子供の大きなビーチタオル買って、今でも寝室の壁に掛けてあります。

海にめんしたホテルですが、砂浜葉なかったようですぐ岩場につながる茂みが 生垣としてつくられていました。そこから、波のくだけるのがみえ、そこの波がしらに月の光が差し込むのがとてもきれいでした。ワイキキでよく 月光と。波を扱う画家の絵(本当に素敵でしたが今は見ることも聞くこともない画家です)を ライトアップされて見せられたことがありましたが本当の景色だとこの時認識したのです。その景色の見られる小道で 不思議な生物との遭遇も。

ちょこちょこと横切る長めの黒い背の低い影。

ネズミにしては大きいし猫にしては長いし・・・

ホテルの人に聞いたら、マングースだとか。

ネズミ退治に人間が連れてきて広がってしまった外来種。

かえって現在では 迷惑種になっているようです。身勝手な話ですが。

ヒルトンワイコロアはイルカのラグーンももっていて、毎日泊り客が応募して抽選に当たるとテレビで発表され イルカと泳ぐ権利が得られます(60ドルとられますが)、わたしがあたって、イルカと泳ぐ体験もしました。

イルカのプールにあたった人数人が インストラクターに連れられて入り、お腹にキスさせてもらったり、ひれにつかまらせてもらって シュウっと運んでもらったりできました。

もちろんライフジャケットは着ていますが。イルカのプールって深いんです。

6m以上はあったと思います。その中で複数のイルカが しゅぱっと移動していてもたもた、浮かんだ人間の合間を待っている間とおりすぎたりするのですが、も宇彼らの世界にお邪魔しました~という感じで 恐れ多い気持ちでした。

とてもやさしくて、怖いことなどなかったですが水中の彼らの能力の高さに圧倒されましたね。

いい体験ができました。

そして、今、どちらの島で、星空観賞したのか思い出せなくなっています。

どちらの島も星の美しい山があるのですが、確か、ハワイ島のマウナケアだったようにも思うのですが、はっきりしません。

ですが、凍り付くような温度の低さと 信じられないほどの数の多い星空。

東京では小さいころから一度も見たことのないものです。

真冬用のスタジアムコートのような上着をかりて 展望台で 鑑賞しますが、何か大声で行ったら落ちてきてしまいそうな気持ちになるせいか、見ている人が誰しも感動を声に出すのについ小声になっていたようにおもいます。

人間、偉大なものの前では 大声は出ないのかもしれません。

人間の小ささを感じるからかもしれません。

たかが島、されど広くて行くところもみるところもたくさんあるハワイ。

まだまだ、通ってしまうかもしれません。